2009年6月14日日曜日

デイブ・カンサス ウォールストリート・ジャーナル発、米国金融危機の全貌

2009.5 酒井泰介訳 株式会社翔泳社

今回の金融危機は、住宅価格が上がり続けていくという楽観的な見通しのもとに住宅価格バブルが発生し、さらに住宅ローン、とりわけサブプライムローンを担保として複雑な金融商品が多量に出回ったあげく、市場にその安全性にたいする疑心暗鬼が広がってパニックに陥ったのが原因である。もともと、銀行貸し出しのなかでも住宅ローンは最も安全でリスクの少ないものと思われてきた。個人の住宅ローンとは、個人が自分で住む住宅を給料の中から長期間にわたって払い続けるものである。そのため、事業の成功・失敗に依存する企業向けの貸出よりはるかに安全なはずだ。また、債務者が支払い不能になれば、担保に取っていた不動産を売ればいい。このため、住宅ローンを証券化した金融商品とはきわめて安全性が高いと思われていた。
長期間にわたる住宅価格の上昇はリスクに対する認識を甘くしてしまったのである。

多くの専門家も、金融システムの崩壊が起きかねない可能性を指摘してはいたが、その引き金になるものがあるとすれば、ドルの暴落だとされるのが常であった。ドル暴落が経済危機を主導する可能性は、たびたび指摘されてきた。米国政府が財政赤字と貿易赤字という双子の赤字を抱え込んでいるかぎりその可能性は消えていない。

この金融危機とその後の景気後退のゆくえについて、著者はウォール街の多くの関係者が予想するような長く厳しい不況よりも、むしろ厳しく過酷だが短い不況のほうが現実的であると述べている。
いまのところ、確かなことはわからない。だが、著者は、民主的な資本主義は弾力性に富んでおり結局は自ら立ち直るものだと言っている。

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