2013年11月1日金曜日

養老孟司 養老訓

2007 株式会社新潮社

むかしから、老人というのは「近頃の若い者は」と言うことになっている。
今は、「若い者は、ゲームやらスマホなどに夢中になっているが、もっと読書をするべきだ。」というのが老人にかぎらず世間の風潮である。
なかには、ゲームをしすぎると、子供の脳に悪い影響を与えると主張する人もいる。
「ゲーム脳」とか「ネトゲ廃人」という言葉がまことしやかに言いふらされたこともあった。
しかし、この「スマホ」、「ネット」、「ゲーム」という言葉を「本」という言葉に入れ替えると、そっくり昔の話になる。
二宮尊徳は子供のころ、薪を背負いながら本を読んでいたという。
おじが読書をすることを禁じていたので、しかたなく歩きながら読書をしていたという。
それで、後世になって、二宮尊徳は偉い人だということになったのである。
ところが、当時は、「本なんか読んで何の役に立つのか、体を使って働くことが大切なのだ。」、「本なんか読んで気味の悪いやつだ。」というのが世間の常識であった。尊徳のおじが、特に意地悪だったわけでもなさそうである。
スマホにせよ、本にせよ、熱中しすぎると、周りの者には不快に感じられることがある。
他人がやっていることが、自分にはわからないこともあるし、自分が相手にされていないと感じることもある。
世代が違ったり、知識がないことが、さらに理解を困難にする。
じつは、スマホで読書をしている人も、けっこういるようなのである。