2009年6月11日木曜日

浜田和幸 「大恐慌」以後の世界 多極化かアメリカの復活か

2008.11 光文社ペーパーバックス

2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻で始まった金融危機で、ウォールストリートはほぼ壊滅した。本書が出た11月には、これはもはや金融危機と呼べる代物ではなく、「世界大恐慌」の再来といっても過言ではないように思われた。それから半年以上経た今では、いくぶん危機感も和らいできたようだ。本書に書いてあるように、アメリカが世界覇権を失いつつあるのは間違いないようだ。代わって台頭してくるであろう中国、インド、ロシアのいずれも不安要因を抱えている。本書はペーパーバックスであり、情報の出どころが明らかにされていないのであるが、なるほどと思わせる。

私が注目したのは、まずインドの経済成長の目覚ましさである。世界最大の鉄鋼メーカーであるアルセロール・ミッタルのCFOがこう言うのだという。「アメリカでなにが起ころうと、世界のほかの地域に目を向ければ成長する可能性がいくらでも見つかる。・・・アメリカ発の金融危機など一時的な激震に過ぎません。」ほかにも、インドを代表するタタ・グループ傘下のタタ自動車は、2008年3月、英国の老舗自動車ブランド「ジャガー」と「ランドローバー」を買収した。
つぎに私が初めて聞いたので意外であったのは、福田前首相が突然政権を放り出してしまった理由である。本書によると、福田前首相は「じつは、アメリカ政府からしつこく"ドルを融通してくれ"との圧力を受けていたようなのだ。しかも、それは半端な金額ではなかった。じつに、日本が保有する全外貨準備高にあたる1兆ドル(約100兆円)の提供を求められていたという。・・・アメリカのムシのよすぎる話に福田前首相はキレてしまったというのである。」なるほど、ブッシュ前大統領であれば、あの当時そのような話があったとしてもおかしくはない。いっさい言い訳をしないで辞めた福田前首相は、じつは意外なサムライだったかもしれないとうのが著者の言である。政治の裏には何があっても不思議でないわけだ。

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