2012年4月29日日曜日

2012年4月24日火曜日

世古孜 ニホンオオカミを追う

1988 東京書籍株式会社

かって本州、四国、九州に分布したニホンオオカミは、1905年に奈良県で捕獲されたものを最後に絶滅したとされている。
なぜ絶滅したのかはナゾであるが、著者は病気の流行によるものではないと考えている。なぜならば、伝染病ならば、犬も感染しているはずだからである。もっとも考えられるのは、個体数が減少して、種族を維持することができなくなったことであろう。
著者は、オオカミは絶滅したものの、オオカミとイヌとの混血のイヌがいると考えた。紀州犬という猟犬にはオオカミの血が混じっているという。私は、遺伝のことはよくわからないが、隔世遺伝とか先祖帰りという言葉は聞くことがある。オオカミがイヌの先祖であれば、オオカミの資質をもった仔犬が生まれることがある。こういうイヌを交配させることによってオオカミを復活させようというのが、著者の試みであったが、志を遂げることはできなかったようである。
将来、遺伝子工学と呼ばれる技術が進歩すれば、もしかしたら、ニホンオオカミを復活させることもできるようになるかもしれない。
著者の故郷である伊勢や熊野には、平家の落人部落と言われている場所がいくつかある。そこには平家の末裔たちが暮らしているといい、著者は、若い頃、そのような平家部落で、はっとするような平安風美人を見たことがあるそうである。このように、人間でさえ何代も前の資質があらわれるのであれば、つい最近絶滅したとされているオオカミの資質がイヌに受け継がれていないわけはない。
オオカミを追い求めることにとりつかれてしまったのは著者だけではないが、そこに共通するのは、オオカミは犬よりも優れた生き物であるという感覚である。人間の召使いになってしまった犬より、人間に媚びを売らないオオカミに惹かれるのもまた自然な感情であろう。

2012年4月20日金曜日

2012年4月17日火曜日

野口悠紀雄 実力大競争時代の「超」勉強法

2011 株式会社幻冬社

1940年生まれ

著者は、もう70歳を超えており、「超」という言葉が流行ったのも、何年か前のことであった。
企業であれば、とっくに、引退している年齢である。それが、今も第一線で活躍できるのは、やはり「超」勉強法などの有効性を自ら実証していることになるのだろう。ただ、勉強は成功の必要条件であるが、十分条件ではない。だから、勉強したからと言って成功するとは限らない。しかし、勉強しないと成功しない。それにしても、年齢によって「定年」を定めて、歳をとると能力までなくなってしまうというような考えが横行しているのは困ったことである。
本書によると、大学生の就職内定率が最低になったのは、単に景気が悪いだけのためではなく、日本の企業が外国人学生に目を向け始めたためも大きいという。たとえば、パナソニックは2011年度新卒採用の8割は外国人になった。東芝やソニーも外国人の採用を増やし、野村証券もリーマンブラザーズの一部門を買収したため、外国人社員が半数近くにまで増えた。もっとも、これは、企業全体で、海外で外国人を採用する「グローバル採用枠」も含めての話である。
これから成長する市場は、日本や先進国ではなく、新興国とりわけ中国であると言われていて、日本企業の海外での投資が増えている。人材面でも、設備と同じ動きが生じており、新興国の優秀な留学生を採用しようとする企業が増えている。
それでなくとも、採用条件に「英語と中国語が堪能な方」と書いてあれば、日本人はたいてい尻込みしてしまうだろう。
私は、日本の企業は外国人の採用に積極的でなく、また、たとえ外国人が入社しても差別されるのではないかと思っていたが、事態は変化しているようである。
「ゴーイング・コンサーン」としての企業は、日本が衰退したとしても、生き残らなければならない。とすれば、こうした動きがおこるのも無理はない。

2012年4月15日日曜日

2012年4月14日土曜日

中谷健一 「どこでもオフィス」仕事術

2010 ダイヤモンド社

N氏はコンサルティング会社の経営者である。と言っても、実体は、ほぼ個人商店である。自社オフィスは、青山においてあるが、レンタルオフィスで、電話の受付サービスと郵便転送サービスを利用している。そこに居ることはほとんどなく、大部分の時間を、クライアント企業やその他の外出先ですごしている。このような働き方ができるのは、ネットにつながるパソコンさえあれば、どこでも仕事ができるようになったからである。
外出先のあらゆる場所がオフィスになる。もっともよく利用するのが、ルノアール、スタバ、マックなどのカフェで、無線LANや電源まで利用できるところがある。ルノアールでは、いくら居ても嫌な顔をされることもない。もっとも、セキュリティには十分注意しなければならない。トイレで席をたつ時には、パソコンもいっしょに持っていくのがもっとも安全である。子供が休みのときのマックは、子供がゲーム機を使うので無線LANがつながりにくくなることがあるので注意である。
外出先で書類のプリントをしたくなるときがある。このようなときには、コンビニでプリントアウトできるところもある。都会では、ビジネスサービスセンターでパソコンからプリントアウト、さらに製本まですることができる。
ファイルはクラウド上に保管して、パソコンとスマートフォンを使用している。こうしておけば、どこでも思いついたことを入力することができるし、データを取り出して利用することもできる。
このような自由な働き方は、自営業者しかできないというわけではなく、ふつうの企業の営業担当者でも同じような行動をとっている。最近、日本の企業でも、「成果主義」が導入され、成果を達成さえすれば、勤務場所も勤務時間も関係なしという会社もあらわれた。
そうなると、会社のチームとしての結びつきが弱くなるかというと、そうとも限らず、ネットにつながるパソコンでしょっちゅう会議をしているようである。行動も「位置情報システム」である程度管理されている。
こういう働き方が、もし一般的になると、不要になるのが、巨大な本社ビルであろう。現在でも、銀行などでは、かって建てた立派な本店ビルの使い道がなくて困っているのではないだろうか。外から見ると立派だが、内部は、ガラガラで薄暗く、メンテナンスのコストばかりがかかっているのだろう。

2012年4月13日金曜日

蜂屋邦夫 図解雑学 老子

2006 株式会社ナツメ社

「老子」という書物は、今から二千数百年前の中国で、複数の人物によって書かれたといわれている。もっとも、考え方はそれ以前からあったのであろう。宇宙の根元を「道」というが、「ミチ」と呼ぶより、「タオ」と言うのがふさわしい。「老子」を読んだと大声で言う人は、あまりいない。そもそも、「老子」では、偉くなったり目だったりしないのが理想の生き方であるとされている。しかし、「老子」という書物は、昔から広く読まれてきたので、よく知られた言葉が多い。
「上善如水」とは、最上の善は水のようなものという意味で、水は万物に利益を与えながら、しかも争わず、誰もが嫌う低いところに落ち着くという。水は、また、柔らかいが硬い岩をもうち砕く強い力をもっている。
「和光同塵」とは、「道」や「道」を体得した人物は、自らの知の光を和らげて隠し、俗世間の人々のなかに同化して交わるという意味で、仏教にも取り入れられた。
「大器晩成」は、ふつう、大人物は徐々に大成するものであると解釈されている。しかし、本書によると、最近発見された古文書には、「晩」という文字ではなく、「免」とあったという。それならば、大いなる器は完成しないという意味になり、「老子」の本来の意味もそこにあったらしい。
「天網恢恢疎にして漏らさず」という言葉も有名である。天の網は広大で目があらいようだが、悪人は漏らさずこれを捕らえるという意味でもあるし、一生懸命頑張れば、きっといつかは誰かが認めてくれるという意味にも解釈されている。しかし、「道」からみれば、人の一生など、ほんの一瞬にすぎない。分からずに終わる悪事もあれば、報われない人生もたくさんあるにちがいない。「道」は、万物を巻き込んで流れている渦のようなもので、人間もその中にいるのだが、ふつうの人間にはとらえることはできない。

2012年4月5日木曜日

野村総合研究所・電通 スマートマネー経済圏 新版

2011 日経BP社

スマートマネーとは、現金以外で、一般に「電子マネー」と呼ばれている決済方法である。
景気は低迷しているが、電子マネーの利用は増え続けている。JR系のSuica、ICOCA、私鉄によるPASMO、流通系のnanaco、WAON、および楽天のEdyなどがあり、リアル店舗での買い物や、インターネットによる決済に利用されている。電子マネーやクレジットカードを利用すると、たいてい、顧客にポイントが付与され、ポイントの魅力が利用をさらに促進する。利用情報は分析され、新しいマーケティング手法が次々と編み出されている。
電子マネーを支える技術が、非接触ICカードという技術である。カードだけでなく非接触ICチップを搭載した「おさいふケータイ」を使えば、複数の電子マネーを1台のケータイで利用できる。
電子マネー相互の利用も進んでおり、Suicaでセブン・イレブンの買い物をすることもできる。
このようなスマートマネーは、日本の消費市場における数少ない成長領域であり、変化に気づかず対応が遅れている企業は、いずれ消費者から見放されてしまうかもしれない。
法制度の整備も進んでおり、2010年には「資金決済に関する法律(資金決済法)」が施行され、電子マネーに関連する事業者が送金サービスを始めることもできるようになった。
資金決済法によると、電子マネーの場合は、価値の半分は取り戻せるように保護されている。さらに送金サービスでは託した金額のすべてが返ってくるように規制されている。いっぽう、ポイントは電子マネーと同じように使われれているが、事業者が倒産すると、その価値は消えてしまう。
スマートマネーは、世界中で日本が最も進んでおり、日本発の新たな社会インフラとして輸出できるようになるかもしれない。

2012年4月2日月曜日

八子知礼 図解 クラウド早わかり

2010 株式会社中経出版

クラウドコンピューティングとは、膨大な情報の処理をインターネットの向こう側にある巨大なコンピューターに任せる技術・サービスのことである。これを利用することによって、ユーザーはネットにつながるデバイスがあれば、どこからでも利用できるので、自分のパソコンやシステムを維持管理する煩わしさから解放される。個人は、高機能のパソコンやソフトウエアを持つ必要がなくなり、企業も自社のサーバーの購入費や維持費などのITコストを低減できる。
このようなクラウドコンピューティングは、ネットに接続するコンピューターが爆発的に増えたことによって、グーグルやアマゾンのような企業がネット経由でユーザーにサービスを提供するようになったことによって生まれた。
はじめは個人向けだったが、企業向けのサービスもクラウドによって提供されるようになった。
クラウドサービスは、今後急速に利用されるようになると思われるが、いくつかの問題もある。
法人の場合、自社のデータやシステムを社外に置くことになり、セキュリティーやメンテナンスが十分かという問題がある。実際、クラウドサーバー内の個人情報が消失したという事故も起きている。
日本の企業では、データやシステムをアメリカの企業に置くことに不安をもつところもある。
クラウドビジネスは、データセンターで莫大な電力を消費する。クラウド社会が到来すると、同じく将来予想される電気自動車との間で電力の取り合いが起こるのではないかと言われている。将来の電力需要は、電気自動車とクラウドデータセンターのために飛躍的に増加する可能性があるが、じゅうぶんな電力が供給できない恐れもある。
クラウドが、地球規模で利用されるようになると、電力が廉価で安定的に供給される国や地域にデータセンターを置くことが有利になる。クラウド技術は、アメリカの企業が優位にたっており、今後もこのままの状態が続けば、日本はアメリカのクラウドコンピューティングを利用するだけになり、日本のIT産業の「空洞化」が進むことも懸念される。