2012年2月15日水曜日

伊藤元重 時代の”先”を読む経済学

2011 株式会社PHP研究所

「為替」の今後を読むためのポイント
2011年の円ドルレートは80円近辺の水準にある。これは、過去もっとも円高であった1995年に匹敵する水準である。
だから世間では、「円高で大変だ」と騒いでいる。しかし、1995年から2011年の間に、アメリカの物価水準は40%上昇しているのに、日本の物価はほとんど変化していない。すなわち、アメリカドルの減価を考慮した実質レートでみると、ピークであった1995年にくらべればまだ「円安」である。
そうかといって、これから先も円高が続くのかどうかはわからない。国力も弱り、貿易収支も赤字になった日本を考えれば、中長期的なトレンドでみるかぎり、円安方向への動きが想定される。市場が見ているのは、たかだか半年程度先までで、閉塞感に満ちている日本だが、当面大きく崩れることはない。だから、当面は円買いで、多くの投資家がその流れに乗っているというだけである。

財政支える国債のバブル
日本の政府債務は増える一方なのに、その債務証書である国債の価格は史上最高値(国債利回りは史上最低水準)である。
もし国債価格が暴落したらどうなるだろうか。そうした不安を感じている人は多く、国債バブルを問題視する人も多い。
国債のバブルは、国債の市場価格の異常な高さ、あるいは国債金利の異常な低さにあらわれている。利回りの低い国債を生命保険会社や銀行は積極的に購入している。彼らがなぜ国債を購入するのかといえば、巨額の預金がたまっているにもかかわらず、他に安全な運用先がないからである。近い将来インフレになったり金利が急騰したりするリスクもなさそうなので、彼らの行動は、合理的である。しかし、政府の財政は赤字続きで、政府債務はいくらでも増え続けることはできない。このままの状況を続けていけば、いずれバブルは破裂すると考えるのが「常識」というものである。ということは、円安、インフレ、金利高がいつかはやってくるということである。

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