2011年1月27日木曜日

上野泰也 日本経済「常識」の非常識

2010 株式会社PHP研究所

1963年生まれ

地銀の危機と道州制

「道州制」という言葉を聞くと、「地方自治拡大」「地方分権推進」といった前向きのイメージが描かれることが多い。
しかし、著者にとっては、「道州制」という言葉からは、人口が高齢化し減少していくなかでの一種のリストラ策、あるいは地方の中核都市への需要の集中に行政組織を合わせようとする動きといったマイナスのイメージが浮かびあがってくる。
たとえば、九州地方では、鹿児島の人が福岡まで買い物に出かけるし、東北地方では仙台が「州都」の様相を呈している。
人は、便利なところや、賑やかなところに集まるので、新幹線や高速道路網が発達すると、人の動きは、地方の中核都市に集中する。

ある地方銀行の経営者の話によると、地方経済は崩壊しつつある。
日本には都道府県が47ある。これに対して、地方銀行の数は64、第二地方銀行は44、信用金庫は272である。ほかに信用組合やJAバンクなど地方金融機関の数は非常に多い。

長い目でみれば、経済の縮小とともに、金融機関の数も減少していかざるをえない。しかし、そうした金融機関の減少が、混乱なく円滑に行われていくとは限らない。
将来、地方金融機関の経営破綻が続くようなことにでもなれば、経済に及ぶ悪影響は、かなり大きなものになるだろう。

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