2009年7月29日水曜日

中空麻奈 早わかりサブプライム不況

「100年に一度」の金融危機の構造と実相
 2009.1 朝日新聞出版

著者はBNPパリバ証券クレジット調査部長 1991年慶応大学卒業

サブプライム不況という言葉も今では聞き飽きた感があるが、その全貌をコンパクトにまとめ、世界同時不況で何が起きるかをテーマに日本経済の短期予測も試みる。

著者はアメリカの不況の大底は2010年になるのが自然であると考え、実態経済に本格的影響が及んでくるのは2009年以降と予測する。

p155
「・・・サブプライム問題が日本経済へ波及するルートは主に三つありました。すなわち、『海外投資家の益出し』と『外資系金融機関の投資縮小』、『国内金融機関の投資見直し』でしたね。そして、その影響が金融機関の『貸し渋り』となって建設・不動産業界を襲い、両業界で倒産企業が続出するという形で現れたのでした」

p158
「不況感が強まってくると、金融機関の『貸し渋り』がどんどん厳しくなってきます。関係の薄い先への貸し渋りだけで済んでいたのが、それだけでは済まなくなるのです。すると地域になじみのある会社で、しかも金融機関と安定的かつ長期的な関係があるところが資金繰りに息詰まっても、支援しないケースが出てくるでしょう。状況が一段階、進むわけです。このように09年以降は、次のようなルートで不況が深化していくものとみられます。
金融機関の貸し渋りの激化→建設・不動産関連企業のさらなる倒産増加→実態経済全体で景況感が悪化→金融機関がさらなる貸し渋り→建設・不動産以外の業種の業績悪化→日本列島が不況一色に・・・」

p159
「08年中間決算などで明らかになってきたのですが、メガバンクはともかく、地銀や信金など地域の金融機関がサブプライム危機などでダブルパンチ、いやトリプルパンチの影響を受けて苦境に陥り始めているのです」

p167
「不況の深化は、二つのルートを通って日本全国へ広がっていきます。一つは、これまで見てきたような『貸し渋り』による影響です。・・・
金詰まりは不動産・建設・ノンバンクを直撃します。そして景況感が悪化してくると、金詰まりは各産業の下位企業に広がっていきます。この下位企業の金詰まりの伝搬が2009年以降、出てくるものと見られます。
もう一つは、世界同時不況による影響です。・・・
残念ながらあと2年は経済の停滞が続くものと思われます」

著者の予想はもっともで、それによると今頃は不況の真っただ中であるはずだ。
しかし、最近では大きな企業倒産のニュースも聞かれず、政府の予想は、景気は持ち直しの動きがみられるという内容である。
この半年で政府が大規模な景気対策を実施し、日銀が潤沢に資金を供給するなど景気を下支えるための必死の取り組みがあったことが大きい。
アメリカの大胆な金融政策、世界各国の景気刺激策が今のところ功を奏している。
ただし、アメリカ経済の回復にはまだかなりの時間がかかると見られている。
したがって、景気は回復したとしてもかなりゆっくりしたものになりそうであるというのが大方の見方である。

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