2009年7月23日木曜日

上田睆亮・西村和雄・稲垣耕作 複雑系を超えて

1999 筑摩書房

上田睆亮 京都大学 
カオスという現象を1961年に世界で最初に発見したうちの一人とのこと。

「しかし複雑系というのはシステム自身も、現れる現象も複雑なのだと思いますが、カオスというのはシステムは非常に簡単です。その簡単で、しかも確定的なシステムでありながら、厄介でランダムな現象がでてくるよ!というところが、カオスの一番重要な所ではなかろうか、と考えております。・・・・まず、そのカオスという術語ですけど、これは、実は私に言わせていただければ、怪しからん、大袈裟すぎる、ということです。」

なるほど、以前からある現象におおけさな名前をつけたのが注目される原因であったらしい。          

西村和雄
 (西村教授が複雑系の経済学者であることをはじめて知った。)

p141 稲垣耕作

「複雑系の研究者たちには虐げられたり無視され続けてきた人たちが多いです。その仕事が独創的で重要なものを目ざすほど世の中の注目を浴びないことがあります。マンデルブローがIBMに在籍していたとき、『最初の10年間は私一人しかいなかった』と言います。1970年代の末ごろに若い私たちは敬意を込めて『怪人マンデルブロー』と呼んだものでした。その後に会って話した時の印象もまさに怪人で、なるほどこういう人が複雑さそのものを研究するのだと深い感銘を覚えました。彼の研究はまれに見る素晴らしいものですが、『みすぼらしかった実際の姿』こそが『アカデミズムからの学問的な自由の代償だった』と書いています。
またローレンツは気象学の泰斗で早く論文を発表しましたが、それでも発掘されるまでに10年以上かかっています。そしてカウフマンの1965年の発見は20年を経てようやく徐々に注目を集めるようになったのです。」

p146 稲垣

「このようなカオスの縁の現象を複雑適応系の研究者たちは「創発」(emergence)と呼ぶことが多いです。自己組織化と言ってよいのですが、予想していた以上に高い確率で自己組織化類似の現象が起こることをカルフラムが発見したものですから、『高い確率の自己組織化』とでも言ったら良いという意味で創発という哲学分野で使われていた用語が当てられています。」

p149 稲垣

「数学と物理学にはある種のミスマッチがあります。人知としての数学は自然界の真理のすべてを表現できる段階にはまだ達しておらず、人間の知恵はいまも自然に全く及びもつかないということです。」

p164 稲垣

「梅棹氏が自叙伝『行為と妄想』(日本経済新聞社)で述べた『すべては妄想からはじまるのである』という科学の方法論が非常に大事だと考えています。つまり想像力が先行した仮説の体系から始まる科学もまた真の科学なりということです。」

私には複雑系の数学や物理学を正確に理解することはできない。
しょせん素人なので、理解できない数式などは抜かして、ざっと読んだだけである。
研究者の世界でも、絶対に弟子のやっていることを認めようとしない先生というのがいて、苦労させられているらしい。サラリーマン社会と同じような現象が学問の世界でもあるらしい。
「複雑系」というのは、何か胡散臭く薄気味悪いところがあるが、新しい世界の発見として注目されているようだ。

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