2012年7月22日日曜日

三上延 ビブリア古書堂の事件手帖


2011年 アスキメティアワークス


「ブック・オフ」で本を売るというのは、いらなくなった本を売るという意味では、せいせいするが、「売る」というにはほど遠い安値で本を手放すことになる。
最近では、図書館に、リサイクル棚が置いてあり、そこへいらなくなった本を置いておけば、誰かが引き取ってくれる。
私は、「ブック・オフ」の105円均一の本を何冊も買う人を見たことがある。そのときは、ずいぶん熱心な読書家だなと思ったものであったが、なかには自分で読むのではなく、どこか他のところで売るために本を買っている人もいるらしい。
「ブック・オフ」は、正確には「古本屋」ではない。
ほんとうの「古本屋」というのは、いまでは手には入らない珍しい本を集める収集家であり、読書家である。
そういうめったに手にはいらない本は、それが欲しい人にとってはいくらお金を払っても惜しくないほどの価値がある。
「ブック・オフ」では、そのようなめったにない本でも、古くてきたない本は値もつかない。
そこで、「ブック・オフ」で安く仕入れて、高く売ろうとする人があらわれる。
105円均一の本を何冊も買っていたのは、そのためだったのかもしれない。
いまでは、ネット上で、個人が古く珍しい本を売るのはかんたんである。
こういう商売を「せどり」という。「せどり」とは、本の背表紙だけを見て、棚から取ることだというが、たしかなことはわからない。
誰かが読んだ古い本には、新刊にはないそれぞれの物語があり、独特の雰囲気がある。
著者は、「古本」ないし「古書」の話をずっと書いてみたいと思っていたとのことである。
どうやらそのもくろみはうまくいったようだ。

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