2012年1月22日日曜日

岡村久和 スマートシティ

2011 株式会社アスキー・メディアワークス

1955年生まれ

スマートという言葉には、「賢い」という意味があるが、「何も指示しなくても、機械やシステムが自分で最適な状況を判断して行動してくれる」という意味でも使われている。
スマートフォンとかスマートグリッドなどの言葉もかなり一般化しているが、「スマートシティ」とは、ITなどの先端技術を使って交通、医療、エネルギーなどの社会インフラそれ自体が、判断力と問題解決能力を持つような仕組みである。世界各地で、IT技術を使った取り組みが試みられている。アメリカの「グリーンニューディール政策」でもその考え方がとりいれられている。IRAの爆弾テロに脅かされたロンドンでは、地下鉄で客と荷物が10メートル以上離れると、自動的に警報が鳴らされる防犯管理システムを導入した。
日本でも、政府や地方自治体が積極的にスマートシティプロジェクトを推進している。
神戸市には、神鋼神戸発電所という発電所があり、市内のほどんどの電力をまかなえる電力を供給している。電力の需給と情報管理を通じて、災害、交通、医療福祉などさまざまな都市情報を収集・伝達するシステムが構築されつつある。
横浜市のスマートシティプロジェクトでは、再生可能エネルギーの導入、スマートハウスの導入、電気自動車(EV)と充電インフラによる次世代交通システムの普及をめざしている。家庭で太陽光発電を導入し、効率的に電気を使うためには、蓄電池が必要になる。しかし、いまのところ蓄電池は高額である。電気自動車に急速放電機能があれば、電気自動車をいつでも電気を取り出せる蓄電池として使うことができる。これが実現すれば、地域のなかで電力を共有したり、融通しあう事が可能になり、市民の生活を大きく変え、二酸化炭素の排出量を減らすこともできるという。
東日本大震災は、スマートシティのあり方に大きな変化をもたらした。それまでは、どちらかといえば、環境対策や効率性、利便性、快適さをテーマとするものが主流であった。しかし、社会インフラが壊滅的な被害を受けた震災の衝撃は、あたらしいニーズを呼び起こした。最悪の事態が発生しても潰れにくい社会インフラを始めから構築することと、万が一潰れても、なるべく速やかに、かつ自律的にインフラ機能が再生する仕組みをつくることである。利便性だけでなく、持続性、復元性、安心・安全が重視されるようになったのである。

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