2012年1月19日木曜日

原丈人 21世紀の国富論

2007 株式会社平凡社

1952年生まれ

アメリカでは、「企業は株主のもの」という考え方が主流を占めており、この考え方をつきつめていくと、企業の目的は株主にとっての価値を上げること、すなわち株価を上げることになる。
現在、もっとも株価に連動している財務指標は、ROE(株主資本利益率)である。ROEを上げるためには、利益を上げることが必要である。利益がかわらないのであれば、株主資本をちいさくすれば、ROEはあがる。したがって、生産設備や研究開発にコストのかかる製造業は、ROEがひくく、ソフトウエア産業はROEがたかくなる。ROEをあげて、株価をあげ、時価総額という企業価値を大きくするために、自社工場を売却したり、研究開発部門を廃止することによって資産を軽減しようとするメーカーがある。しかし、結果的にメーカーとしての強みをなくしてしまい、自滅の道を歩むことになる。本来あるべき企業の目的とは、優れた商品をつくり、優れたサービスを提供し、社会に貢献することであるはずである。すぐれた製品をつくることにではなく、見せかけの財務指標をよくすることに力をそそぐアメリカ型資本主義は、あたらしい基幹産業を生み出す力をうしないつつある。日本は、アメリカ型の資本主義をまねしようとしているが、アメリカ型の資本主義は、新しい産業を生み出すことができない。かって、アメリカ西部開拓時代には、幌馬車がさかんに使われており、幌馬車会社のM&Aが繰り返されていた。しかし、蒸気機関車の出現によって幌馬車会社は消えてしまった。このようなことが、これからの社会でおきないともかぎらない。あたらしいヴィジョンを持ち、あたらしい産業を生み出す芽は、若い人や中小企業のなかにあり、それを発見し、育てていくのが、ベンチャーキャピタルの役割である。

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