2009年10月22日木曜日

安達誠司 恐慌脱出

2009.5 東洋経済新報社

1965年生まれ

著者は、アメリカの金融危機から始まった世界的な経済危機は典型的な恐慌型不況であるという。リーマン・ブラザースの破綻により、金融機関の間に「カウンター・パーティリスク」が広がり、金融システムが崩壊した。このため、実体経済の悪化が世界的に加速度的に進んでしまった。
今回の危機がアメリカに始まったため、アメリカ型資本主義の没落論が、一時、日本の経済論壇に流れていた。著者は、この見方に共感するのは、かって学生運動を経験した団塊の世代を中心とした人たちだとみている。
「『団塊の世代』に属する評論家が、アメリカの経済危機について嬉々としてコメントする姿を見ていると、今回の金融危機、およびこれに続く世界経済危機に際して、学生時代に心酔していたマルクス経済学のルサンチマンが爆発した印象を持たざるをえない。」(p12)
「団塊の世代」が皆、学生運動をしていたはずはないが、経済評論家のなかには、それらしき人もいることは事実である。
ところで、著者の見方では、今回の経済危機はアメリカが最も先に回復する可能性が高い。アメリカでは危機克服のための政策が適切に選択され、その効果が出つつある。ひるがえって、日本については、2003年からの景気回復を牽引したのは、輸出セクターのみであり、内需セクターは低迷していた。そのため、今回の経済危機で、輸出依存度の高まっていた日本経済は大きな痛手を被った。
そのうえ、アメリカの積極的な財政金融政策の発動と日本の消極的な政策発動の格差は、さらなる円高を招き、デフレ圧力を高めている。
著者は、現在の経済的苦境に際して、与野党共に無策であり、したがって日本経済に望みはないという。
著者の経済危機克服のための最終シナリオでは、日本の政府が財政再建路線を放棄して大規模な財政拡大に乗り出すと同時に、日本銀行が国債の買い切りオペレーションを拡大して大規模な量的緩和をおこなう。この流れの中で、日本経済にも回復の芽がでてくるという。

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