2010年5月6日木曜日

本多庸悟 「情報の数学」再入門

2007 日刊工業新聞社

「情報」という言葉がいたるところで使われている。
同じような言葉に「データ」がある。情報とデータは同じ意味で使われることもあるが、データは単なる事実や材料として、情報のほうは意味や概念を持つ場合に使われることが多い。
言葉も情報であるが、はじめから定義されて作られたわけではないので、時代によって変わったり人によって振れたりする。
「情報」という言葉は、明治9年に軍事用語の訳語として初めて表れたとされている。戦後は、姿を消したが、その後、日常的な一般用語として再登場し、普及して現在に至っているという。いまでも、情報漏洩とか機密情報とかなにか怖い響きがあるのは、そのためだろうか。

アメリカのシャノンという学者は、情報の数学を創始したひとりである。
それによると、文字、数字、記号などのメッセージの集まりが情報になる。
つぎに、情報量とはメッセージを対数で表現したものである。2の8乗とか言う場合の8が対数である。
情報量に起こりうる確率を掛けたものからエントロピーという概念が導き出された。
わかりきった情報のエントロピーは小さく、どれがくるかわかりにくい情報ほど、エントロピーは大きい。
エントロピーは、もともと熱力学に由来する。熱力学でのエントロピーは、粒子の運動がもっともバラバラで、全体として混沌とした状態になったとき最大になる。情報のエントロピーは、メッセージが均等にバラバラになって、情報が何を意味しているのかわかりにくくなったとき最大になる。
通信工学における伝送量や雑音の問題に関連して使われているのがこのような情報の概念である。

情報という言葉はいろいろな意味で使われているが、情報があふれていることは事実である。そのため、情報が多すぎて処理する時間もなく、かんじんの判断は占い師に頼るとしたら残念なことである。情報はいくらでもあるはずなのに、一瞬先に何が起こるのかさえ知ることはできない。

2010年5月4日火曜日

梶井厚志 戦略的思考の技術

ゲーム理論を実践する

2002 中央公論新社

1963年生まれ

自分のとる行動だけでなく、他人の様々な行動と思惑がお互いの利害を決めるような環境を戦略的環境という。
戦略的環境のもとで、合理的に行動するように意思決定することが戦略的思考法である。
戦略的行動とは、自分が動いたときに、相手がどう動くのか予想して、自分にとって有利に動くにはどうしたらいいのか考えることである。
人も組織も、しばしばこうした考え方で行動する。

たとえば、人の上に立つような人物が使う思わせぶりなそぶりも戦略的行動である。「何か困ったことがあったら、いつでも俺に相談しろ・・・」と言うが、肝心の「困ったこと」はめったにやってこないし、なかなか相談できるものではない。将来の恩を目の前にちらつかせておいて、本当に恩を与える確率は非常に小さい。
小さな可能性だけで、相手を自分の意のままにあやつることができるとすれば、有利である。もっとも、守れない約束を繰り返していると信頼されなくなって、自分に不利になる。

パソコンやデジカメが普及して、誰でも写真を自分でプリントできるようになった。
こうなると、メーカーはプリンターを安く売って、インクを高く売ろうとする戦略を取るのが、合理的である。消費者には、はたして、売っている価格が原価に基づいて決められたのか、それとも企業の価格戦略なのか知ることは難しい。
一時、携帯電話が無料というのがあったが、これなどは明らかに、無料のわけはないから、企業の販売戦略である。

戦略的思考を始める前に、自分の取りうる戦略にはどのようなものがあるか考えることが必要であるが、これが難しい。
戦略的というより以前に、何が目標なのか知ることすら難しいのが人生である。

2010年4月30日金曜日

2010年4月29日木曜日

田尾雅夫 成功の技法

起業家の組織心理学

2003 中央公論新社

1946年生まれ

今の社会は、ベンチャーやアントルプルナー(起業家)を必要としている。
けれども、誰でも出来るようで出来ないのが、ベンチャーであり、アントルプルナーである。
著者は、どのような人が、どのような事情で成功できるのか考察している。
ベンチャーやアントルプルナーになれる人は、ごく一握りの人たちである。
そういう人たちは、特異な才能に恵まれた人であると思われている。
本など読むより前に、能力や境遇、なかには逆境までもが、彼らを駆り立てるのである。
今の社会では、政治家や医者などをはじめとして、二世がよく目に付く。起業家にしても遺伝子があって、親や親族にそのような経験を持つ人がいることがある。
彼らの成功の裏には、陰になって支持してくれる人がいることも多い。
全く単独で成功するのは、至難の技である。

成功した経営者などで、カリスマと呼ばれる人がいる。
カリスマとは、ある意味ではウソといって悪ければ、ほらが吹ける人である。そのうちに、その人の周りに人が集まってきて、ウソがウソでなくなるということがある。
何でもわかっているリーダーなど、そうやたらとはいない。自信たっぷりにウソをつき通せる度胸または信念のある人が、カリスマやリーダーになるのである。
こうした演技が出来るのも、生まれ付きの才能によるところが大きい。
才能と幸運に恵まれ、成功したとしても、つねに失敗のリスクはつきまとっている。
悲惨な末路をだどる人も珍しくない。
したがって、大多数の普通の人は、組織に属するという、より安全な方法を選んでいる。それでも、あえて会社を辞めて起業するのであれば、分相応ということを心がけるべきである。

著者は、起業をしようとするならば、まず、自分に対してできるだけ正確で厳しい自己像を持つべきだと言う。
それもそうであるが、考え込んでばかりいては、チャンスをつかむことはできない。
起業をした人のなかには、若くて知識も経験も豊富とはいえない人もけっこういる。
幸運にも、その成功が大きければ大きいほど、他人からは、才能があるように見えるのである。

2010年4月27日火曜日

2010年4月26日月曜日

石井勝利 知らないと損! 経済ニュースがわかる本

2009 明日香出版社

円高と円安
今まで1ドル100円で交換されていたのが、90円で交換されるようになれば、円高といわれ、110円になれば円安といわれる。
3年前には、120円程度だったのに、最近は90円程度の相場が続いているので、かなりの「円高」になっている。円高になると、ドル建てで取引している輸出企業は、手取り額が減り、業績が悪くなる。
日本企業の業績悪化の原因は、アメリカ経済の後退と円高の影響が大きい。
円高の原因であるが、アメリカ経済の落ち込みが激しかったので、相対的に日本のほうがマシになったと言われていた。
しかし、日本の経済が好調とはいえない。円高の主な原因は、日本とアメリカとの金利差が縮小したことにあるらしい。
数年前は、金利の安い日本で円を借りて売り、金利の高いアメリカでドルを買って投資する「円キャリートレード」が行われていた。それが、金融危機以降は逆の流れに変わり、しかも日本とアメリカの金利は、ほぼ同じになった。
アメリカの金利も、とうぶん上がらないと見られている。
したがって円ドル相場も現在の水準が続くのではないだろうか。
日本企業は円高に対応するため、コストを削減しようとする。このため、雇用も給料も増えない。所得が増えないので、日本の景気も、そう簡単には良くならない。
世界の景気が回復するにつれて、日本経済も徐々に回復するのを待つしかない。

バイオエタノール
バイオエタノールとは、石油ではなく植物から作られる燃料である。
原料となる植物は成長の過程で光合成により大気中の二酸化炭素を吸収しているので、燃焼により二酸化炭素を放出しても、大気中の二酸化炭素の総量は変わらないとされている。
バイオエタノールは、サトウキビやトウモロコシなどの穀物から作られる。
バイオ燃料の先進国はブラジルであるが、アメリカや日本でもバイオ燃料を導入することが目標になっている。
バイオエタノールの将来性に期待が集まる一方、バイオエタノールの生産が、逆に、環境問題を発生させ、あるいは農産物の価格の高騰をまねくのではないかと懸念されている。
原油価格が高騰したとき、代替燃料としてのバイオエタノールが注目を集めた。
小麦や大豆を生産していた農家が、トウモロコシへの転作を行うのではと、穀物や飼料の価格が高騰した。
日本は、小麦、トウモロコシ、大豆のほぼ全量を輸入に頼っている。このため、これらの価格上昇は加工食品価格を上昇させ、飼料価格の上昇によって、牛肉や豚肉の価格も上昇する。
ここでは、円高は、輸入価格の高騰を緩和してくれる。

2010年4月24日土曜日