2012年12月18日火曜日

加賀乙彦 不幸な国の幸福論


2010 株式会社集英社

誰もが幸福を求めるのだが、幸福という理想的な状態がどこかにあると考えるのではなく、自分が幸福になるのだと考えるべきである。
そうすると、自分の心の持ち様によって、今と変わらなくとも、幸福になれることがわかる。
ありきたりの考えのようだが、不幸とか幸福とかは、相対的なものである。
定年後のサラリーマンも、しばしば、心理的に不安定になることが多い。
特に、現役時代に地位や肩書にこだわっていた人ほど、心理的に落ち込むらしい。
現役時代には、会社での立場や、顧客や取引先に気を使って感情を抑えていたのだが、退職後は、そうした心配がなくなるので、抑えていた感情が解き放たれ、ちょっとしたことでも、怒りやすくなる。
病院や銀行などで、待たされたと言って、すぐキレる老人は、かなり多い。
なかには、脳梗塞や認知症の初期症状で怒りを抑制できなくなった「感情失禁」のケースもあるという。
相手にされないのに、なにかと口うるさく小言を言うのも年寄の特徴である。 
歳を取ると、涙もろくなったり、怒りやすくなったり、感情を抑えられないのも一種の老化現象である。
ここで、自分が老化したのだと自覚することが必要で、それによって、もっとゆったりとした気持ちになり、心が穏やかになる。歳をとったら、活動もゆっくりになるので、何をするにもあわてないことである。
幸福とは、心の状態なので、自己の欲望をいくら追及しても、けっして満足することはない。
人のためになることをして、人に感謝されてこそ、自分も幸福になるのである。

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