2012年12月2日日曜日

田中元 最新福祉ビジネスの動向とカラクリがよ~くわかる本


2012 株式会社秀和システム

国の財政は逼迫しており、政府は、「社会保障と税の一体改革」を旗印にしている。
国の収入である税金を増やし、支出である社会保障費を抑えようということである。
消費税増税によって社会保障財源を安定的に確保するとともに、社会保障制度の「機能強化」を目指すとしている。
「機能強化」というと、社会保障が充実するかのようなイメージがあるが、実態は、社会保障は、国が「必要性が高い」と認めた部分に給付を集中させるという「選択と集中」を意味している。
それでは、どこに「集中」させるのかといえば、介護であれば、要介護への移行を阻止する「介護予防」に、貧困対策であれば、生活保護につながらないようにその前の段階で押しとどめる「就業等に向けた自立支援」などに重点が置かれることになる。最もコストが高くなる前の段階でとどめようとするコストと効率を重視する考え方である。
社会保障費の「重点化」が進むと、「重点化」に漏れた分野への国の給付が厳しく締め付けられるようになる。
従来から、介護や福祉の仕事は、重労働・低待遇が一般的であったが、若い人が福祉の仕事をめざさなくなるのではと懸念される。
介護サービスを受ける側でも、安い費用で質の高い介護サービスを受けることができにくくなる反面、カネを惜しまなければ、手厚い介護サービスが用意されることになる。
「公共性の空間は官だけのものではない」というフレーズが現れたのは、かなり前のことであった。
福祉においても、国がすべて面倒を見てくれることを期待することはできなくなっている。

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