2012年6月12日火曜日

新藤兼人 いのちのレッスン


2007 青草書房株式会社

シナリオライターで映画監督の著者は、つい最近100歳で亡くなった。
31歳のとき最初の妻を失った。軍隊に召集され100人の部隊のうち生き残った6人のうちの一人となった。
34歳のとき再婚し、長男が誕生した。39歳のとき、女優の音羽信子と出会い、関係をつづけながらも、妻と別れようとはしなかった。60歳のとき、妻が家を出て、離婚した。その後、5年ほどして妻の死を知らされた。音羽さんと正式に結婚したのは66歳のときであった。そんなせいか、著者は、夏目漱石の「こころ」という小説に衝撃を受けた。漱石は、人間とは裏切る生きものなのだと書いていた。70をすぎたころには、永井荷風のすごさに脱帽した。その徹底的に自己のみを貫く生き方に感動したのである。
著者の生き方は、波瀾万丈で、周囲に波風を立て続けてきたように見える。しかし、著者は、シナリオを書きたい、映画を撮りたいという衝動に突き動かされ、わがまま勝手に生きてきた。だから、90をすぎても、心は老人にならず、つねになにかを欲してざわめいている。

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