2011年2月5日土曜日

大竹文雄編 こんなに使える経済学

2008 株式会社筑摩書房

大学で教えられているような経済学は、現実の経済とはあまり関係がない。
伝統的な理論経済学では、人は合理的な行動をすると仮定されている。
社会の仕組みを考え、人々が豊かになるにはどうしたらよいかを考えることは、伝統的な経済学ではうまくいかない。そのためには、人がどういう価値を重視するのか、価値観を持っているのかを知らなければならない。
非合理的な行動であっても、共通の行動パターンがあれば、それを経済学に取り込んで分析しようとするのが「行動経済学」と呼ばれる研究分野である。

その一例を挙げると、出世を決めるのは、能力か学歴かを研究した経済学者がいる。
それによると、大学卒の年収は、高校卒にくらべて高い。さらに、偏差値の高い大学のほうが、年収も高いという。
ここで問題になるのは、出世して年収が高いのは、大学を出たためなのか、能力があったためなのかということである。
たとえば、東京大学に入るくらいの能力があれば、たとえ東京大学に行かなかったとしても、もともと優秀なのだから、いずれにせよ高収入を得ていたかどうかである。
東大の卒業生が、東大を出ていなかったとしたらどうなるかを知ることはできない。
ただ、1969年に、一度だけ東大の入試がなかったことがあった。
このとき、東大進学を考えていた受験生は、ほかの上位大学に進んだと思われる。
それでは、この人たちは、普段の卒業生よりも出世していたのだろうか。
こういうことを調査した結果、民間企業の場合は、とくに違いが認められなかったが、官庁の場合は、東大卒の不在で空いたはずのポストを他大学卒で埋めきることはできず、上下の年代の東大卒が占めたという。
これは、たとえ同じ能力を持っていたとしても東大を卒業することが、中央官庁での出世には重要であることを示唆しているという。

私の個人的な感じでは、大卒と高卒の年収の違いは、サラリーマンではあまり無い。
ただ、所得の高い経営上層部は大学卒で占められているため、平均では大学卒が上のほうに引っ張られるのであろう。
東大を卒業することが、官庁では出世の重要な要因となるのは、一般的に受ける感じとだいたい一致しているようである。

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