2010年5月27日木曜日

ゆうきとも 人はなぜ簡単に騙されるのか

2006 株式会社新潮社

1969年生まれ

プロマジシャン

奇術とか手品というと、なにかしらマイナスのイメージがある。
いっぽう、人にはなぜか騙されたいという気持ちもあり、推理小説が読まれるのも、プロマジシャンが人気者になるのもそのためである。
「振り込め詐欺」や超能力、霊能力など、数多くの詐欺事件がマスコミをにぎわせ続けている。そういう事件を客観的に眺めると、どれも、単純で幼稚な手法が多い。
じっさいのところ、詐欺事件が後をたたないところをみると、人は簡単に騙されてしまうものらしい。
普通の人は、騙したり、騙されたりといったことには慣れていない。人が言葉や文字で表すことと、その人の内面の意思とは同じであるはずというのが社会のルールである。幼い頃から、騙すことは悪いことだと教えられてきた。いちいち人を疑っていたら、日常の生活にも支障をきたしてしまう。
そこで、詐欺師は、そのような人の心につけ込んで、あんがい簡単に人を騙すことができるのである。

世の中にはあらゆる「騙し」のテクニックが横行している。
よく使われるのが、「あなたは信じますか?それとも信じませんか?」といった言葉である。こういうことを、ある状況で言われると、どぎまぎして焦ってしまうものである。ちょっと考えてみれば、この質問の本当の答えに近いのは「わからない」である。しかし、こういう質問が時間的余裕を与えられないで発せられると、「信じる」と言ってしまう人もかなりいるらしい。「信じる」はプラスイメージの言葉として、「信じない」はマイナスイメージの言葉として刷り込まれているので、自分が悪い人間だと思われたくないという心理が無意識に働いて、「信じる」と言ってしまうのかもしれない。
反対に、騙されまいとして「信じない」と、かたくなに言う人は、「自分の目で見ないと信じない」と言うことが多い。これは、「自分の目で見たら信じる」ということであり、このような人も、ありえないことを見せつけられると、あとは簡単に信じ込んでしまうことがある。

マジシャンにしても詐欺師にしても、基本的なテクニックは、冷静に考えさせる余裕を与えないことである。騙されないためには、相手を全面的に信じ込んでしまうのではなく、冷静に時間をかけて考えることである。

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