2010年1月30日土曜日

櫻井敬子 行政法のエッセンス

2007 学陽書房

行政法とは、法律の一分野で、私たちの日常生活に直接かかわる身近な存在である。行政体制・公務員制度がどうあるべきかという大きな問題から、日常生活で出会う道路交通法・建築基準法・狂犬病予防法などに至るまでいろいろである。

憲法では、立法・司法・行政の三権分立が建前であり、法律を作るのは国会の役割である。行政の仕事は、すべて法律に従って行わなければならない。
しかし、実際には、ほとんどの法律は行政によって作られ、国会での審議は深くつっこんでは行われてこなかった。また、裁判所による行政にたいするチェック機能も事実上形骸化していると言われている。
このようにみると、法律の面からも、実際に我が国の統治を取り仕切ってきたのは行政官僚であることがわかる。
あまりに巨大で強力になった行政組織の「改革」は、政治主導で行われてきた。

中央省庁改革は、縦割り行政や行政組織の肥大化という弊害を克服し、簡素で透明、効率的な中央政府の実現をめざすという方針のもとに進められた。
中央省庁改革のポイントは
①内閣機能の強化(政治主導の確立)
②中央省庁の大くくり再編成(縦割り行政の弊害の排除)
③独立行政法人制度の創設(透明で自己責任に基づく業務運営)
④行政のスリム化(官から民へ、国から地方へ)
である。
なかでも、大蔵省から金融行政を切り離した「財政と金融の分離」は大きな改革であった。

司法制度改革は、「思い出の事件をさばく最高裁」と言われるほど裁判所制度が世間の常識とあまりにもかけはなれているという問題意識から始まった。裁判を裁判官だけにまかせておいたら大変なことになるという危機感がら、一般の常識を取り入れることを目的に「裁判員制度」が始まった。
なぜ、一般人がこんなことをしなければならないのかと思わせる「裁判員制度」であるが、そのような経緯があって誕生したようである。

地方分権改革では、これまでの中央集権的な行政体制を方向転換して、 国と地方との関係を「対等・協力の関係」にすることをめざした。
地方が真に自立するための自主的な財源を保障する「三位一体の改革」が行われた。
最近、知事の発言が目立つのも、知事は住民の直接投票によって選ばれたこともあるが、地方分権推進という時代の流れに乗ったものであろう。

1 件のコメント:

  1. 法律について
    素朴な三権分立論では、法律は国会がつくることになっているが、実質的な法律は、行政や司法もつくる。
    行政がつくるものを命令(政令、内閣府令、省令、規則)という。法律は、実務にかかわることは命令に委任していることが多い。なお、裁判所のつくる裁判所規則も法律のようなものである。

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