2009年11月23日月曜日

小峰隆夫他著 データで斬る世界不況

2009.4 日経BP社

著者は経済企画庁経済研究所長などを勤めたいわゆる官庁エコノミストである。
サブプライム危機後の世界的な経済不況の分析とその対応にどう取り組むかは、エコノミスト冥利に尽きるという。
いま、世界金融危機が世の中の経済についての考え方や枠組みを大きく変えていくという「パラダイム転換」とか「時代の転機」という壮大な議論が盛んである。しかし、著者は、パラダイム転換論には相当の誇張があると考えている。
まず、「市場原理主義」が今回の危機をもたらしたという説に対しては、著者はもともと存在しなかった主張を対象に批判を展開していると言い、市場が本来持っている利点を発揮できないような社会では国民の福祉水準は、かえって低下してしまうと言う。「金融資本主義の時代は終わった」とか「金融工学が諸悪の根源だ」という説に対しても、そもそも金融業はサービス業の一種であり、モノ作りと、とりわけ区別する必要はない、サービス業と製造業はどちらも必要な存在であると言う。金融工学もひとつの技術であり、使い方をコントロールすることが重要なのである。
今回の不況は、もともと世界経済の大きな落ち込みで始まった。したがって、世界経済の回復がなければ、日本経済も回復に向かうことは難しい。世界経済の落ち込みを日本の景気対策だけでカバーするのは不可能である。
著者は2009年2月に二つのモラトリアムを提案したことがある。すなわち、第一に政治抗争のモラトリアムであり、危機的な経済状況のなかで、与野党が足の引っ張り合いをしていたのでは国民が被害を受ける。超党派での経済対策の立案と実施が必要である。
第二に長期プランのモラトリアムであり、この際、財政の健全化、年金制度の立て直しなど長期的な課題は一時棚上げするべきである。 世界経済、アジア経済そして日本経済の当面の先行きは大変厳しいため、とりあえずは雇用の安定などで超党派的な政策が必要である。
かって経済官僚であった著者の視点は、穏健で良識的である。

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