2009年11月20日金曜日

榊原英資 強い円は日本の国益

2008.9 東洋経済新報社

1941年生まれ

「世界は今、大航海時代に匹敵する大転換の時代、パラダイムシフトの時代に入ってきています。1990年半ばから急速に進展したIT革命とそれを駆使するグローバリゼーションが、世界経済システムを一変させつつあるのです。」(まえがきより)

かっての大航海時代からの流れは、ヨーロッパの強国がアジアやアフリカを支配下において、安価で大量に資源を手に入れ、自分たちの工業化に利用していた。しかし今では中国やインドのような巨大な人口を持つ国が工業化をなしとげたため、それらの国のエネルギーや食糧などの需要はやはり巨大になった。かっては、安易に大量に市場で調達できた資源が、今や稀少になり、逆にかっては稀少だったハイテク製品が安くなっている。一種の価格革命が起こりつつあり、この流れは今後とも続いていくと思われる。
高騰し、稀少品化するエネルギーや食糧といった資源をいかに買うか、そうした資源開発にいかに投資するかが重要になっている今、強い通貨は重要な武器になる。円高になれば、製造業の輸出競争力を弱めるのはたしかであるが、原材料はほどんど海外から輸入しているので調達コストは低下する。本書では従来の「売るシステム」から「買うシステム」への移行の必要性を分析し、円高政策への転換の必要性を説いている。
著者は、現在(2008年)の為替レートは、円安バブルであると言う。
それは、2002年からの長期間にわたるゼロ金利政策によってつくられたもので経済力を反映した為替レートではない。長すぎたゼロ金利の維持が、日本からの資本の流出を加速し、円キャリートレードを生み、円安バブルを作り出していった。
いずれ円安バブルははじける。これからは円高を背景にして、日本の金融資産をどう有効に投資していくかを考える時期になる。
19世紀から20世紀は製造業の時代であり、20世紀後半はハイテク製品の時代であったが、21世紀は天然資源の時代になりそうである。

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