2013年7月8日月曜日

森永卓郎 モリタク流アキバ経済学

2012 日経BP社

秋葉原は日本の産業構造の将来を予測させる街であるという。
秋葉原の「主力産業」は、つねに市場を10年リードしている。
1960年代、秋葉原は家電の街で、そこで登場した新製品が次の10年間、全国に拡がっていった。70年代は、オーディオの街、80年代はパソコンの街、90年代はマルチメディアの街になった。
2006年に閉店したアキハバラデパートは、日本ではじめて作られた駅ビルである。
ここでも、日本ではじめてという商売が、いくつもある。
本書によると、今では日本中に広まっている100円ショップの原点はここにある。
全国展開されている紳士服の量販店ビジネスは、馬喰町や横山町で仕入れた紳士服をここで売ったのが始まりである。
この店頭で通行人相手にはじまった実演販売はテレビショッピングに取り入れられた。
そして今は、アニメやフィギュアなどの「萌え」商品、メイドカフェ、AKB48などのアイドルユニットが秋葉原の「主力産業」になっているように見える。
あえて10年後の日本を予測するとすれば、アニメ風の「萌え」キャラクターが日本中にあふれ、どの都市にも秋葉原のような繁華街ができる。
商品は性能や機能で選ばれるのではなく、「かわいい」とか、「クール」とかいった基準で選ばれるようになる。
本物と模型の地位が逆転し、模型をまねた本物が人気商品になる。
今では、人々はインターネット上の仮想空間でつながっているから、現実空間は必要ないようにも見える。それでも、秋葉原のような街には、そこへ行くとなにかがあるような気がして、人が集まり、人が集まることによってなにかが伝わっていき、流行が生まれるのかもしれない。
秋葉原で流行すれば全国で流行するのであれば、それよりもさらに前に、少数の「オタク」たちが、この街のどこかで、何か新しいことでも企んでいるのではなどと勝手な想像もふくらんでいく。
それとも、この街では、社会の流行が他よりいくぶん早く見ることができるとはいっても、単なる商業施設の集まりというだけなのだろうか。

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