2011年6月9日木曜日

中西輝政 アメリカの不運、日本の不幸

2010 株式会社幻冬舎

1947年生まれ

著者は、右翼の論客と言われているが、「なるほど」と思わせることも多い。
副題は、「民意と政権交代が国を滅ぼす」である。
いつの時代でも民主主義にとって最も罪深いのは政治家とマスコミである。
政治家は、「票」と権力ポストのためなら何でもする。
マスコミは、視聴率のためなら国を売るようなことを日々くりかえしている。
大衆は、マスコミに踊らされ、テレビを見て簡単に判断し、それを自分の考えと勘違いして投票する。だから、いちばん悪いのはいわゆる「民意」なのである。
多くの歴史家は、まちがった戦争を検証するとき、その責任を大統領や軍部のせいにする。しかし、自国の歴史に重大な責任を感じるべき「A級戦犯」こそは国民大衆である。民主主義社会において、国民大衆という最大多数を最大悪人として糾弾することはできない。これが、民主主義社会の最大の弱点であり、最大のタブーになっている。
民主党による政権交代は、多くの国民の期待を裏切ることになっているが、それというのも視聴率第一主義のマスコミに踊らされた国民大衆自身のせいでもある。
日本は、急速に「統治不能」の国になりつつあり、いまやギリシァ危機も他人事ではない。
著者のような、「マスコミが悪い」という意見が、新聞やテレビで取り上げられるとも思われないが、新聞に書いてあることや放送されていることでも、疑ってかかる態度は必要であろう。
これを、新聞やテレビの側から見ると、どうなるだろうか。
新聞は、一日経ったら「新聞紙」と言われるように、記事や意見の多くは、その日限りのようなものである。テレビのコメンテーターは、テレビ局から高額のギャラを貰っているので、沈黙したり、「わからない」とか、「後で考えてみます」などと言うことはない。そのため、これまた、一般受けするコメントを発している。
マスコミと世論とは、影響しあいながら世論を作っているので、まったく別というわけではない。

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