2011年4月20日水曜日

伊東光晴 政権交代の政治経済学-期待と現実

2010 株式会社岩波書店

1927年生まれ

自公連立政権から民主党を中心とする政権に交代したことのメリットは高く評価されねばならない。
まず、自公長期政権と利益集団との癒着関係がもたらした社会のゆがみの是正、つぎに野党時代に貯えた人材と知識の顕在化である。
新しいダムは作らないという民主党の政策を著者は支持する。
ダムの建設は、それが必要なものかどうかとはべつに、莫大な利権を、その地域にもたらす。
土木建設業者と自民党の政治家との癒着を絶っただけでも政権交代の意味は大きい。

しかし、民主党政権が動き出すにつれて、自民党との違いを示すことができず、自民党化している。
普天間問題では、対米対等路線を打ち出すことはできなかった。
菅首相は、選挙中に消費税を上げるべきだと言った。菅首相の消費税引き上げ論が、たとえ正しかったとしても、選挙という場でそれが理解され、説得が成功することはない。大衆社会の庶民は、理性や知性の上に立った「市民」ではない。マスコミや感情によって大きくゆれるのである。
この点で、消費税引き上げを選挙で口にすることに反対した小沢一郎のほうが政治感覚ではるかに上である。

民主党と自民党を区別するものは、自民党の右翼的体質である。
自民党や、自民党を割ってでた群小新党は、憲法9条の改正および核武装の検討に、それができないことを知りつつ、前向きの姿勢を示している。
民主党が自民党に近づいたので、自民党は、さらに右傾化せざるをえなくなったのだろうか。

いかなる政権であっても、長期間政権の座にあるならば、腐敗を内蔵する。
政権交代の可能性があること自体が、腐敗を防止することになる。

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