2017年3月8日水曜日

きまぐれ暦

1979  星新一 新潮文庫

著者は、数多くの短編を書いたが、製薬会社の御曹司で、自身でも会社を経営していたことがある。著者によると、かって江戸時代には医師は存在していたが、じつはほとんど役に立たなかったという。人体についての知識もなく、まともな薬も存在しなかったからである。それでは、西洋医学がすぐれていたかというと、解剖学だけは正確だったので日本人を驚かせたものの、効果のある薬などなにもなかった。
パスツールが細菌を発見したのは、やっと19世紀後半になってからである。
その後、ワクチンが発見され、いろいろな薬が製造されるようになったが、結核でさえ、つい最近まで不治の病に近かった。ハンセン病は、らい病と呼ばれて恐れられ、患者は隔離されていた。

今の世の中は薬が多すぎるので、私たちは薬のありがたみを忘れがちであるが、もし薬がなかったとしたら、たしかに大変なことである。

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