2013年3月5日火曜日

ビートたけし 下世話の作法


平成21年 祥伝社

近頃では、親会社の下にいくつかの会社がぶらさがっている持ち株会社がはやっている。
ビートたけしというキャラクターを、持ち株会社にたとえてみたらどうなるだろうか。
ビートたけしは、下町の貧乏人の家に生まれ、浅草で漫才師になったが、いつのまにか、飛ぶ鳥を落とす勢いになっている。
これを持ち株会社にあてはめるとこういうことになる。
まず、持ち株会社としては、冷静な批判精神を持った北野ホールディングズがある。
その下に、「お笑い芸人ビートたけし」「映画監督北野武」、それに資産管理会社である「かみさん」がいる。
お笑い芸人ビートたけしは、浅草のストリップ劇場で漫才から出発し、どこかで引け目を感じている自分を意識している。
映画監督北野武も、何かの縁で映画などつくりはじめてしまったのだが、これがほんとうにやりたいことかどうかはわからない。
それらを客観的に見てコントロールしているのが北野ホールディングズである。
ビートたけしの稼いだお金は、すべて資産管理会社のかみさんが管理している。
ビートたけしは、かみさんから小遣いをもらったり、モノを買ってもらったりしているので、目の玉の飛び出るような値段のエルメスのTシャツを着たり、マンションを所有して不動産経営をしていても、心は浅草の貧乏芸人の頃と変わらないのである。
ビートたけしは、冷静だから、今のテレビのくだらなさも、十分わかっている。
テレビ番組でやっていることは、エロ、飯を食うこと、お笑いの三つだけだという。
はじめからお笑い芸人を目指すような今の若者とは違い、芸人をやっていることが恥ずかしいという感覚も持っている。
テレビでさんざん他人の悪口を言っているが、悪口にも作法があり、妬んだり、恨んだりだけの悪口は言わないようにしている。
悪口を言うときは、よく聞くと、相手を立てて自分を被害者に聞こえるように気をつかっている。
今は、自分の金を払ってお笑い芸人養成スクールへいく若者がけっこう多いそうだから、時代も変わったものである。テレビで言っていいことと、言ってはいけないことのルールでも教わっているのだろうか。
スターが誕生するのは、その時代の人達がスターを作り出してきたからだと言える。
美空ひばりや力道山はスターであるが、もしも彼らが今の時代に現れてもスターにはなれない。
ビートたけしは、現代の人気者だから、なんでも思い通りになることだろう。
政治家にも、かんたんになることができるにちがいない。
もっとも、政治家になったりすれば、ビートたけしのキャラクターに傷が付くだけで終わるのではないだろうか。
その点は、芸人に「なりたくてなったわけじゃない」と客観的に判断できるうちはだいじょうぶである。
自分にはできない「夢」を持つより、自分の生き方そのものを「芸」にできるのが「粋な人」だという。

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