2009年12月29日火曜日

北岡元 ビジネス・インテリジェンス

2009.2 東洋経済新報社

1956年生まれ

この本で紹介しているのは、ビジネス・インテリジェンスの中で、現在もっとも洗練された手法を確立していると思われるCI(競合インテリジェンス)の世界である。
アメリカでは、CIAなどの政府インテリジェンス組織が、インフォメーションを収集し、分析してインテリジェンスをつくり、未来を予測することで安全保障政策の立案・執行に役立てている。
インフォメーションは、インテリジェンスになることで、私たちが判断・行動するために必要な知識になる。
インテリジェンスというと盗聴とか、産業スパイとか暗いイメージを連想することもあるが、インテリジェンスとは考え方であり、生きざまである。
その際、重要なのは「自分を知る」ことである。
「自分を知る」ことで、よりよく「彼を知る」、さらに「未来を予想する」ことができる。
自分の強いところや弱いところが正確にわかっていれば、現実の変化に対応して、自分の判断・行動を柔軟に修正していくことができる。
実際に、テロ対策や災害対策におけるインテリジェンスの最前線でも、同じ考え方が用いられている。
企業も国も、いつテロの脅威にさらされるのかわからない。
それでは、どうしたら、自社を守れるのか。ここでも重要なのは、「自分を知る」というアプローチである。自社の防護されるべき環境を絞り込み、攻撃者の手口を予想・分析し、疑惑のサインを日常的に監視する。ここでは、「彼を知る」という情報は使用されていない。
いつ起こるかわからない自然災害にも同じ考え方がもちいられる。災害の予想よりも地域社会の脆弱性を分析して、それを除去していくことが重要である。
「自分を知る」ことによって、自分の弱いところや強いところを分析し、自分の利害にかかわる未来を予想する。
未来は完全には予測できないので、複数の仮説を用意する。
それを、シナリオという。できたシナリオのうち、自分にとって、不確実だがインパクトの大きいシナリオを特に警戒すべきである。そのようなシナリオについては、そのシナリオが実現する場合には、事前にこういう兆候が現れるはずだという形で兆候を予想してモニターする。
予想されたシナリオの可能性が高まった場合には、事前に対抗策を講じ、 新たな戦略を立案・執行、つまり判断・行動を予定することができる。
このような「インテリジェンス・サイクル」を作って回していくのである。

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