林大訳
2004 株式会社白揚社
著者は40代の大学教授であるが、これまで自分が何をいちばん勉強したいのかわかったためしがないし、今も判断がつかないという。
役に立つ可能性のある興味深い研究の選択肢はさまざまで、ほかを捨てて一個の主題に焦点を合わせるのは、 必然性がなく窮屈なようにずっと思ってきた。一方、研究者としては専門分野を選ばなければならない。
このジレンマを解決する方法のひとつが、確率・統計を学ぶことである。そうすれば、その方法を幅広い分野に適用できる。
確率の法則によって、様々な現象が要約でき、予測できる。著者は、このところ、確率・統計を主として医学の研究に利用している。
しかし、ほかの分野への興味をなくしたことはなく、もっと一般的な確率法則の適用可能性について書き留めたのが本書である。
起こる事象が独立の場合、つまりどの事象もそれに先行する事象に依存していない場合、つぎに何が起きるのか予想することはできない。
確率論で予測できるのは統計的予測であり、個々のレベルでは、実際の予測は不可能である。
ルーレットでは球が転がり始めるときは、つねにまったく新たなスタートなのである。
おなじように、統計からはある集団の振る舞いは予測できるが、個々人の振る舞いは予測できない。 個々人の間には必ず予測できないバラツキがある。
この世界に確実なものはなく、偶然によって左右される。 だが、その偶然を貫いて確実に成り立っている法則が、確率・統計の法則である。
確率・統計の法則に逆らって偶然を味方につけようとするのが、ギャンブラー、占い師、超能力者、相場師などだが、 こちらのほうも人間的にはおもしろい。
人はなぜ当たる見込みもない宝くじを買うのだろうか?
個人にとっては、宝くじに当たるかはずれるかの可能性は半々である、つまり、当たる確率が50%のように見えるのかもしれない。
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