2012年9月26日水曜日

藤巻健史 マネー避難


2011 株式会社幻冬社

日本の累積赤字は、1000兆円近くにも達している。
単年度の歳入は40兆円台であるにもかかわらず、歳出は90兆円台である。
差額は、国債の発行でまかなっているが、政府が財政破綻するであろう日は確実に近づいているように見える。
国債が市場で消化できなくなれば、日銀が国債を引き受けざるを得なくなり、そのぶん日銀券が増発されて、猛烈なインフレを引き起こす。またたくまに、円と国債、それに株価は大暴落する。
著者は、以上のようなシナリオを描いているので、これから資産を守るには、円預金を引き出し、外貨で分散投資するしか選択肢がないと言う。

ところが、最近は、円は弱くなるのではなく強くなっており、インフレどころかデフレである。
これを、どう考えたらよいのだろうか。
長期的には、日本の財政が破綻するリスクは高いが、とりあえず国債が市場で消化されている限り為替レートには影響がない。
為替レートに影響するのは、もっと短期的な外貨(ドル)と円との需給関係である。
日本人は、昔から、日本は資源のない国だから、モノを作って、それを外国に輸出して稼ぐしかないと考えてきた。
変動為替相場のもとでは、輸出企業が稼いだドルを売り円に変えると、ドル売り・円買いという行動になるので、外国為替市場では、つねに円高圧力がかかっている。
政府や日銀は、円高が進むたびに、金融緩和をしたり外国為替市場に介入してきたが、同じ考え方や行動を繰り返してきたので、円高はなかなか止まらないのである。
高くなりすぎてしまった円が、もし安くなれば、日本経済はふたたび好転するであろう。

為替レートは、経済を考えるときには非常に重要である。
中国が大発展を遂げたのも、人民元という通貨を安く保つ政策を続けてきたためである。
かって、中国が工業的に遅れていた頃、日本の企業は、中国では人件費が安いというので、先を争って中国に進出した。たとえば、中国人の給料は日本人の2分の1だとかいっても、中国人が中国で暮らしているかぎりは、他の物価も同じ水準だから、それで十分やっていけることになる。
つまり、人民元という通貨を外貨に対して安くすることにより、外国からの投資を呼び込んだのが中国の政策であった。
日本やアメリカからの資本を受け入れて大躍進をとげた中国であったが、その間、中国の日系企業もまた発展し、ついに日系企業が中国人にとって目に余る存在になってきた。
企業の労働争議でさえもも、ナショナリズムの色合いを帯びてきた。
日本政府による尖閣諸島の国有化に反対して、中国各地で大規模なデモがあり、日系企業が襲撃された。
日系企業が巻き込まれたというよりは、日系企業にたいする強い反感があるからこそ起きた事件のように思われる。

2012年9月21日金曜日

夏の公園


反町公園(神奈川区)

2012年9月18日火曜日

上野佳恵 「過情報」の整理学


2012 中央公論社

今は、「情報」があふれかえっている。
その理由は、もちろんインターネットの普及である。
インターネットで言葉を検索すれば、いろいろな情報がすぐに手に入る。
情報が爆発的に増えている理由の一つは、普通の個人でも情報が発信できるためである。
以前は、限られた地域の人たちにとっては重要でも、それ以外の人にとっては興味をそそられない情報があった。、
たとえば、評判の良いクリニックや歯医者、おいしいレストランなどの情報である。
いまでは、そういう情報でさえも、ネット上には、地元の人の口コミ情報で溢れている。
飲食店や居酒屋は、ネット上の評判を気にしないわけにはいかなくなり、なかにはサクラを使ってまで、良いうわさを流そうとするものが現れることになる。
ネット上の情報は、容易に「コピー・アンド・ペースト」され、おなじような情報が次々と拡大再生産されていく。その過程では、伝言ゲームさながらに、少しずつ内容がずれていき、はじめとは違う内容になってしまう。
大量のネット上の情報の中から、瞬時に入力したキーワードに合致する結果を表示してくれるのが、「検索エンジン」である。検索結果は、上から順番に表示されるが、人が見るのは、上位のランクに表示されたものだけである。
そこで、見てもらうほうでは自分たちのサイトをなるべく検索結果の上位に表示させようとする。
サーチマーケティングとかサーチエンジン最適化(SEO)とは、ウェブサイトの作り方や各種の設定によって検索結果の上位に表示されるような工夫をして、ウェブページへのアクセス数を増やそうというビジネスである。
その結果、検索結果の上のほうだけ見ていると、知らないうちに企業の宣伝や広告のサイトにアクセスさせられることになる。
Googleなどの検索エンジンは、日々改良されているが、知りたい情報が十分に手に入るとはかぎらない。
ネット情報の量はきわめて大きいが、それがほんとうに正確かどうかはわからない。
情報に振り回されない力、情報を見極める力も必要である。