2019年6月16日日曜日

日本会議の研究 菅野完

2016 扶桑社新書

  「日本会議」は安倍政権を支えていると言われている。
  「日本会議」には、神社関係者、国会議員、大学教授、元最高裁判所長官など、日本の保守階層のお歴々が名を連ねている。
  しかし、本書によると、真に日本会議を動かしているのは、50年ほど前、長崎大学などで活動していた、かっての右翼学生運動家である。
  彼らは、「成長の家」という宗教団体の創始者である谷口雅春の教えを信奉している。
彼らが、様々な右派団体に働きかけ、「日本会議」を作り上げたのである。
異なる宗教団体を、一つにまとめるキーワードが「憲法改正」である。
他の点では異なるけれども、「憲法改正」という点では共通する右派団体の集まりが「日本会議」である。
  なぜ憲法を変えなければならないのか。
今の憲法は、アメリカが日本を占領していた時、日本を弱体化し、二度とアメリカに逆らえないようにするため、日本に押し付けたというのが、彼らの共通認識である。
だから、押し付けられた憲法ではなく、自主憲法を制定しなければならないことになる。
具体的にどのように改正するのかでは一致しているわけではないが、アメリカに負ける前の日本を取り戻すのだとすれば、明治憲法の「復元」が最終目標ではないかと疑われる。
  戦前・戦後を通じて、日本の右翼は共産主義や社会主義に対抗し、「反共・愛国」を旗印にしていた。
だが、ソ連が崩壊し左翼が弱体化すると、敵を見失った右翼も行き場を失った。
そこで、「憲法改正」という目標を掲げて、再出発したのである。
  「憲法改正」は、かって岸信介が果たせなかったもので、孫の安倍晋三の大きな目標になっている。
今のところ、安倍内閣と日本会議とは、互いに利用しあっている。

2019年6月9日日曜日

在日朝鮮人 水野直樹・文京洙

2015 岩波新書

  日本の敗戦直後、朝鮮人は自らを開放された民族であると思い、無軌道な行動に走る者も多かった。警察も取締りには及び腰で、日本のヤクザと朝鮮人との抗争が頻発していた。
46年の総選挙では、戦前に内地戸籍を持たなかった朝鮮人は有権者から除外された。
47年には、最後の勅令として「外国人登録令」が制定され、在日朝鮮人は外国人と見なされた。
52年の講和条約の発効にさいして、旧植民地出身者は日本国籍を失うことになり、外国人登録証の常時携帯と指紋押捺が義務づけられた。
日本国籍を失った在日朝鮮人は、国・自治体などの公共機関に職を得ることができなくなり、当初は、ほとんどの社会福祉制度でも適用外とされた。
 在日朝鮮人は、差別されこそすれ、「特権」などはないように見える。
それにもかかわらず、なぜ「在日特権」という言葉が横行するのか。
在日朝鮮人は、企業に就職することが難しいので、パチンコ店や焼肉店の経営、プロスポーツ、芸能界などへ活路を見出した。これらの職業で成功し、裕福になった在日朝鮮人が目立つのも事実である。
日本の税金は、申告納税が基本になっている。
ここで、会社に勤めている者は、給料から天引きされるので、税金をごまかすことはできない。いっぽう、パチンコ店や焼き肉店は、申告所得を少なくして、税金を減らすことは容易である。
脱税や節税のやり方は、在日朝鮮人の商工団体などが指導したり、代行しているらしい。
 近頃では、日本社会の多国籍化が進んでいるので、在日朝鮮人を含め、外国人に対する見方も変わっている。
日本国籍取得(帰化)者も増え、「在日朝鮮人」は減りつつあり、中国人のほうが多い。