2009年12月11日金曜日

ビル・エモット 世界潮流の読み方

2008.12 PHP研究所

鳥賀陽正弘訳

1956年生まれ

著者はジャーナリストと作家の仕事をつうじて、世界の出来事に絶えず魅せられてきた。
世界の潮流は複雑で、すべての国や企業、それに人間が、それぞれお互いに影響を及ぼしあっている。なんらかの結論を見いだしたと思ったとたんに、突然予期しない出来事が、起こったりする。世界の動向を研究することは、たいへん興味をそそられるとともに、有益であり、謎めいている。

「近年とくに欧米で、年長者やインテリ階級の人たちが、総じて嘆いていることがある。
それは現代人の生活がもはや文化的でないことだ。つまり若い人たちの考え方や作文能力の水準は低下し、さらにテレビやインターネットは、人々に十分な情報や教育を与えずに、むしろ彼らを、単純な娯楽を楽しむ、受動的な消費者にさせているのである。」(p268)
著者は、はたして、このようなメディアや一般的な情報の知的水準の低下は本当だといえるのだろうかと疑問を感じている。
マスメディアが、高い視聴率を得るために水準を落としている反面、教育水準は事実上、全般的に向上している。読者や視聴者が、情報や娯楽をみつける方法は増えているので、マスメディアが視聴者を大量に増やし、広告を集めることが、ますます困難になっている。そのため、マスメディアの娯楽化がすすみ、視聴者からは、間抜けでおろかになったと思われるのである。
人々は、情報過多の時代にあって、何か特別なもの、ありきたりでないものを求めている。一部のメディアは、差別化された情報に特化し、教育水準が向上したおかげで、レベルの高い出版物の読者も以前より増えている。
たしかに、テレビ番組などの幼児化や低俗化を危惧する声がある一方、人々の知的レベルは、けっして低くない。
メディアに踊らされるのではなく、自分で考えなければならない。

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