2009年12月26日土曜日

野口悠紀雄 未曾有の経済危機 克服の処方箋

―国、企業、個人がなすべきこと

2009.4 ダイヤモンド社


現在起きているのは世界的なバブルの崩壊であるから、日本経済の落ち込みが終わったとしても、基本的な条件が変化しなければ底から這い上がることはできず、低水準の活動が続くだけである。 これからも過剰な生産能力の負担が企業収益を圧迫し続けることになるだろう。 この状態を変えるためには、日本の経済構造と産業構造の基本的な改革が不可欠である。
すでに、中国が安価で豊富な労働力を使って工業製品を作れるようになったことは、日本の高度成長期型産業構造を揺るがせるものであった。 しかし、日本は、その課題に取り組むことなく、古い産業構造を維持したまま、金融緩和と円安政策で外需に依存する道を選んだ。
そのよう輸出立国戦略の破綻が明らかになった今、日本は基本的な方向転換と経済再構築を迫られている。 ところが、日本の経営者は他力本願であり、日本銀行の資産は劣化し、財政赤字は拡大し、銀行の不良債権はこれからも拡大する。
こうしたことを考えると、日本経済の落ち込みは、以前に戻るだけで済む保証はなく、さらに悪化するおそれがある。
それを防ぐためには、日本経済の基本を改革しなければならないが、まず大事なのは、個人が何をするべきかである。
日本では、これまで組織に依存する傾向が圧倒的に強かった。 能力のある人は、ほとんどが大企業に入社し、そこで昇進するという生き方である。
しかし、いまや組織にすべてを賭けてしまうのは、リスクが高いことがわかった。
これからは、どの組織に属しているかではなく、個人としての市場価値を持っているかどうかが重要になる。
組織から個人の時代にという変化は、個人の立場だけからでなく、日本全体としても必要なことである。 独立して起業する人や、ベンチャービジネスを立ち上げる人が増えることによって、日本の産業構造や経済構造を変えることができる。
自分に投資して勉強すれば、現在の危機を大きなチャンスに転換できるかもしれない。 そこで、自己投資としての勉強で重要なことは、問題そのものを探すことである。
受験勉強のように、問題が与えられているのではない。 難しいが、問題そのものを探すことが必要になる。
何をやったらよいかは、本書に書いてあるわけではなく、読者が自分で判断しなけばならない。

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