2019年3月23日土曜日

「右翼」の戦後史 安田浩一

2018 株式会社講談社

    社会には矛盾や問題が山積している。
これを解決するため、「左翼」は社会主義や共産主義に頼ろうとする。
それに対して、「右翼」は  伝統と愛国、天皇を最重要視する。
「右翼」は、直情的で、しばしばテロや暴力という直接行動に訴えることが多く、暗いイメージを抱かれることが多い。

    戦時中は、日本全体が国粋主義という「右翼」そのものであった。
戦後は、敗戦と天皇の人間宣言とによって、右翼も自滅した。
しかし、共産主義や社会主義勢力が台頭してくると、これに危惧を抱いた
保守勢力によって、「反共」を旗印とする「行動右翼」や「任侠右翼」が登場した。
黒塗りの街宣車に代表されるのが、それである。
このような「右翼」も、「左翼」による「安保闘争」や「学園闘争」が終わると、同時に勢いを失った。

     最近、注目されているのが、「日本会議」と「ネット右翼」(ネトウヨ)である。
「日本会議」は、過激な行動をするようなことはない。
そのかわり、各界の著名人や、保守政治家、神社など宗教関係者がメンバーとして名を連ね、層が厚い。
現行憲法の改正を主張し、安倍総理の政策にも大きな影響を与えている。
「ネット右翼」(ネトウヨ)は、ネット上の掲示板から生まれた。
無責任に嫌韓、反中のヘイトスピーチを叫ぶのが特徴である。
「日本会議」や「ネット右翼」は、日本社会の「右傾化」と呼ばれる時代の流れのなかで生まれるとともに、そういう空気をつくりあげるのにも効果を発揮している。

    「右翼」が目指すのは、戦後の諸制度の否定である。
戦後民主主義のもとで培われてきた、自由、平等、人権といった価値観が危機にさらされかねない。
また、これからの時代は、外国人労働力に頼らざるを得ず、外国人との共生が課題になるが、右翼の排外主義が、思わぬトラブルを起こすのではという懸念もある。