2012年6月27日水曜日

八幡和郎 世襲だらけの政治家マップ


2011 株式会社廣済堂出版


日本では、親の「地盤」を引き継いで政治家になる「世襲政治家」の数が多い。
最近の総理大臣もほどんどが世襲政治家である。小泉純一郎は、祖父の代からの政治家一家に生まれた。
「変人」と言われた小泉純一郎が総理大臣になるには、同じく世襲政治家の田中真紀子の功績が大きかった。
小泉純一郎は、若い頃、福田赳夫や安倍晋太郎にたいへん世話になった。
そこで、それぞれの子供である福田康夫や安倍晋三を特別に優遇し、総理大臣になるのを助けて恩を返したのである。
麻生太郎も、吉田茂の孫で、大富豪である。
世襲政治家が多いのは、民主党でも同じで、小沢一郎と鳩山由紀夫は、典型的な世襲政治家である。
菅直人と野田佳彦が総理大臣になって、世襲政治家の独占は打ち破られたが、いずれも苦戦を強いられている。

世襲政治家は、本人の能力というより父親や祖父が政治家であったことで国会議員になり、政界で異例のチャンスを与えられ、「収まりの良さ」ゆえに権力の頂点に立つというのがひとつのパターンになっている。
その結果、国民は、誰が総理大臣になってもまともな期待をしなくなっている。
このような政治家しか持てないのは、国民の不幸と言えば言えなくもないが、国民の責任でもある。

日本では昔から「世襲」が美徳とされてきた。
能や歌舞伎のような伝統芸能の世界はもちろん、老舗の商店や農家も同じである。
農業という職業は、親が農家でなければ、ほとんど、就くことができない。
都会の農家は、地主という別の一面を持っているが、親が地主でなければ、子が地主になるのは無理である。
「世襲」という慣習の根は深い。

2012年6月26日火曜日

種田山頭火 1882~1940


先日、読売新聞の「名言巡礼」に山頭火の「濁れる水の流れつつ澄む」が取り上げられていた。
山頭火の句碑は全国に800以上あり、芭蕉の3300に次いで多いそうである。
43歳で行乞の旅に出た山頭火は57歳で亡くなるが、その直前、庵のそばを流れる小川を見て自分の生涯と重ね合わせるように出てきたのがこの句である。
行乞の旅のなかで詠まれた句には「分け入っても分け入っても青い山」「うしろすがたのしぐれてゆくか」「鉄鉢の中へも霰」などがある。
テレビ番組「吉田類の酒場放浪記」の吉田類も山頭火と同じように酒ばかり飲んで放浪の旅を続けている。
黒ずくめの服装も山頭火を真似したのだろうか。

2012年6月17日日曜日

季節の花

ほたるぶくろ
あじさい

2012年6月12日火曜日

新藤兼人 いのちのレッスン


2007 青草書房株式会社

シナリオライターで映画監督の著者は、つい最近100歳で亡くなった。
31歳のとき最初の妻を失った。軍隊に召集され100人の部隊のうち生き残った6人のうちの一人となった。
34歳のとき再婚し、長男が誕生した。39歳のとき、女優の音羽信子と出会い、関係をつづけながらも、妻と別れようとはしなかった。60歳のとき、妻が家を出て、離婚した。その後、5年ほどして妻の死を知らされた。音羽さんと正式に結婚したのは66歳のときであった。そんなせいか、著者は、夏目漱石の「こころ」という小説に衝撃を受けた。漱石は、人間とは裏切る生きものなのだと書いていた。70をすぎたころには、永井荷風のすごさに脱帽した。その徹底的に自己のみを貫く生き方に感動したのである。
著者の生き方は、波瀾万丈で、周囲に波風を立て続けてきたように見える。しかし、著者は、シナリオを書きたい、映画を撮りたいという衝動に突き動かされ、わがまま勝手に生きてきた。だから、90をすぎても、心は老人にならず、つねになにかを欲してざわめいている。