菊地正俊訳
2009.8 株式会社洋泉社
今回の世界的な経済危機は戦後最大の不況となりそうであるが、中程度の危機は10年に1回程度は起こっている。
過去25年間、自由市場資本主義には誤りがないことを前提にした政策がとられてきた。レーガン革命と旧ソ連邦の崩壊が、自由市場主義に対する信奉と称賛をもたらした。アダム・スミスの「見えざる手」は、市場の「誤りのない手」に対する熱狂にとって代わられた。
今回も、ヘッジファンドや投資銀行の行動を、政策担当者は黙認し続けた。
事実は、過去数世紀にわたって、景気拡大の後期に、疑わしい投資や向こう見ずな戦略が、世界的な景気後退の主因になってきたのである。
通常の状態では、計画経済と比べれば、資本主義の方が、資源配分について効率的であり、より優れている。
資本主義では、資産市場で儲けたいという人々の欲望が実際に資産価格の高騰につながり、バブルが形成されていく。
多数派の経済予想も、過去の事実を基に予想される傾向がある。
コンセンサス的な経済予想は、状況がさし迫った時になってやっと変わるので、ほどんど役に立たない。
景気拡大が進むと、人々は投機的になり、債務が過剰になり、最後はネズミ講的になる。
景気循環の最終局面では、実体経済での小さな失望が、金融市場での大混乱をまねき、バブルは崩壊する。
最後に政府の救済策が必要になるが、それが、この本のタイトルとなっている「資本主義のコスト」である。
今後、世界経済がどのような資本主義形態に向かうのかは、確かではないが、国家が経済活動で大きな役割を果たし続けることは間違いない。政府の役割を重要視した経済学者に、ハイマン・ミンスキー(1919~1996)がいる。
著者は、中央銀行は物価だけでなく、資産市場に注目して金融政策をするべきであると主張する。
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