理論と実際
2008.3 日本経済新聞社
1949年生まれ
本書は、言ってみれば、日本銀行を代表する見解である。
まず、日本銀行については、1998年に施行された日本銀行法第1条では、「日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする」と規定したうえで、第2条では「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする」と規定している。
日本銀行は独立して金融政策を決定するが、具体的には「金融政策決定会合」で意思決定が行われる。
「金融政策決定会合」のメンバーは総裁、2名の副総裁、6名の審議委員の合計9名である。
金融政策委員会では、金利や通貨量に関する具体的な運営方針を公表する。
例えば、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.5%前後で推移するよう促す」などと公表している。
その判断の根拠になるのは、経済の現状判断と予測である。
日本銀行は、専門家としての高い能力にもとづいて、適切な金融政策を運用することが期待されている。
さらに、金融政策運営の独立性を与えられている条件として、意思決定の内容および過程を国民に明らかにしなければならない。
このように見ると、日本銀行は独立して金融政策を決定するとはいっても、選択の余地は、限られている。
したがって、日銀の役割は大きいのだが、景気の不振やバブルの発生をすべて日銀の失敗のみに結びつけるのは、わかりやすい一面で、かえって事実を誤らせる考え方だと言わねばならない。
本書からは、日銀の金融政策は、選択の余地が少ないなかでは、おおむね適切であったのではないかと思えてくる。
よく議論されている「インフレターゲット政策」については、そもそも「インフレ・ターゲット」という言葉の意味する内容が論者によって異なるとし、今のところ欧米の中央銀行でも、はっきりとこの政策を採用しているところはないと言っている。
バブル経済と金融政策については、著者はバブルの発生は完全には防止できないと言う。バブルであったかどうかは、後になってみなければわからないことが多いのである。
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