2009年11月6日金曜日

堺屋太一編著 日本 米国 中国 団塊の世代

2009.3 株式会社出版文化社

1935年生まれ
 
著者は「団塊の世代」という言葉を作ったが、今ではすっかり定着している。
単に数が多いだけでなく独特の経験と集団性を持つ世代と認識したのである。
同時期に、世界の各国、特にアメリカや中国でも他とは異なる人生経験を持った世代ができていたという。
日本の団塊世代は、戦後の高度成長期に育ち、自分たちが豊かになり、豊かになり続ける夢を見ることができた。
この世代が、夢からさめ、未来に対する不安を感じだすのは、ごく最近、日本の国力と国際的地位に翳りが見えだしたころである。
それでも、過去の人生のほとんどを通じて、先輩たちの築いた体制と価値観とに安住することができた。
それに比べると、諸外国の同世代は、より劇的な人生を過ごした。
とりわけ、中国の戦後っ子は、彼らが少年から青年になる10年間、「文化大革命」という「空白」を過ごさねばならなかった。
日本の団塊の世代が物心ついた1950年代後半には、日本の戦後体制はすでに出来上がっていた。
それは、①日米同盟を基軸として、経済大国・軍事小国を目指すという外交コンセプト②官僚主導で規格大量生産型の近代工業社会を築くという経済コンセプトである。これを定めたのは、明治生れの世代である。
その後、日本はこの路線を走り続け、平和と繁栄を享受することができた。
しかし、1990年代初頭のバブル景気の崩壊以来、日本は経済の不振と社会の弛緩に苦しんでいる。
団塊の世代は、あたかも永遠であるかのように信じてきた戦後体制の崩壊に驚いた。そればかりではなく、 自分たちが60代を迎えた今、世界的な大不況が襲ってきた。
このような世の中を生き抜くためには、変化に対応する知恵と想定外の出来事に動じない覚悟が必要だ。
著者は以上のように述べたうえで、「団塊よ、諦めるな!君たちにはまだ未来がある」とエールを送るのである。

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