2009年10月25日日曜日

ジョージ・ソロス ソロスは警告する

超バブル崩壊=悪魔のシナリオ
徳川家広訳

2008.9 株式会社講談社

1930~ 

本書は2008年春に書かれたが、著者は「超バブル」の崩壊が目前に迫っていると言う。人々の誤った投資行動が「超バブル」を生み出したが、その原因となる「支配的なトレンド」と「支配的な誤謬」とが存在している。「支配的なトレンド」とは信用膨張、つまり信用マネーのあくなき肥大化であり、「支配的な誤謬」とは、19世紀には自由放任と呼ばれていた、市場にはいっさい規制を加えるべきではないという考え方―すなわち市場原理主義である。
著者は、ヘッジファンドの草分けとも言われるクォンタム・ファンドを設立し、投機取引により、莫大な利益を上げた。そのため、世間では投機家として名高いが、若いころ、カール・ポパーの本に啓発を受けて以来、本当に興味を持っているのは、哲学である。著者は人間の社会を、独自の「再帰性」の理論により説明しようとする。理論は難解であるが、それによると、社会の「部分」である人間は、社会を誤謬なしに「完全」に理解することはできない。
「自然」を対象とするのであれば、人間の理解にたいして自然は変化しないが、対象が「社会」であると、人間の理解によって社会も変化してしまう。人間の思考と社会現象は互いに干渉しあうのである。
私なりに解釈すると、たとえば人が不動産価格が上がると思うと、買う人が多くなるので、実際に不動産価格が上がるようになる。これを見て不動産価格は上がるものだとさらに多くの人が思うようになる。こういう循環が起こるとバブルが生じることがある。
バブルは徐々に膨らんでいって、ついには破裂するが、著者のような投資家にとっては、そこに儲けのチャンスができる。
そういうわけで、著者は、2008年中に「信用膨張の飽くなき肥大化と、行きすぎた市場原理主義とによって、サブプライム・バブルをはるかにしのぐ規模にまで成長した『超バブル』が弾けようとしている」(松浦民輔の解説)と主張するのである。

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