2008.10 株式会社岩波書店
金子勝 1952年生まれ
アンドリュー・デウィット 1959年生まれ
本書の目的は、アメリカのサブプライム危機にはじまるグローバル同時不況のメカニズムを明らかにすることにある。その説明は、1年後の今から読むと他の本とあまり変わりはないように見えるが、本書の特色は日本経済についての見方にある。
小泉「構造改革」という「政治のバブル」に酔っていたツケが、これから猛烈に日本経済を襲ってくる、早急に政策を転換しなければ、日本経済は死へ向かって突き進むよりないと言う。
著者の言葉は、例えばつぎのように攻撃的である。
「竹中平蔵を筆頭に、『規制緩和がまだ足りない』とか、『改革が中途半端に終わった』という。経済が成長すれば、規制緩和のおかげ、経済が停滞すれば規制緩和が足りない―まるで呪文のようだ。宝くじに当たれば信心のおかげ、交通事故に遭えば信心が足りないと言っているのと同じだからだ。」(p69)
振り返ると「構造改革」をはじめとして、小泉首相は、巧みな「演出」で「小泉劇場」と揶揄されたこともあった。しかし、それではその代りに何ができるのかというと、実際にできることは限られてしまうようである。本書では、「小泉構造改革」のマイナス面への容赦のない批判が目立ち、日本の置かれた困難な状況は、すべて「小泉構造改革」だけが原因だと言っているように聞こえる。むしろ、小泉政権での「規制緩和」や「構造改革」には限界があったという表現のほうが事実に近いのではないだろうか。
「知識社会のもとでのインフラ投資は、道路ではなく教育である。」とか「将来起こりうる大きなリスクであるドル暴落にそなえ、東アジアレベルで、通貨や貿易の連携を強める政策を急ぐべきである。」など、今の民主党の政策に近い主張も見受けられる。
むすびでは、「私たちは、いま未知のリスクに直面している。それは、まだ確かな形をとっていないが、社会崩壊の危機をはらんでいる。あらゆる知恵を絞って、それを回避しなければならない。」と書いている。
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