2011年4月24日日曜日

伊東光晴 政権交代の政治経済学 その2

2010 株式会社岩波書店

郵政改革はどうなるのか

郵政民営化は、「民間でできることは、民間で」などと言われたが、それだけでは、かならずしも理由にはならない。そこで、誰が得をし、誰か損をするかというと、得をするのは郵貯・簡保を支配下におくことができる旧大蔵省および郵貯の力を弱くしたい銀行である。損をするのは、合理化や閉鎖されるおそれのある地方の特定郵便局などの郵政族である。

郵政族の力も強かったので、西川社長が「かんぽの宿」を売却しようとすると、鳩山総務大臣は、許可しなかった。
「かんぽの宿」は、利益をあげることを目的とするものではなかったのだが、利益をあげることを目的とする民間企業のやり方で、これを処理しようとすれば、郵便事業ではないのだから、売ってしまうのも、ひとつの方法である。
オリックスに売る価格が安すぎるとしても、さらに転売して儲けるのでなければ、利権とまでは言えない。
民間企業では、いくらコストがかかったものでも、将来利益にならないのであれば、安くても売ったほうが合理的である。
三井住友銀行の頭取として経営手腕を買われた西川社長であったが、辞任に追い込まれたのは無念であったろう。

他方では、過疎地の郵便局が採算に合わないため無くなったり、郵便や宅配が遅れるとすれば、民営化がよいことだとは言えない。
民営化をすると、どうなるのかが十分議論されず、言葉だけが一人歩きしたのかもしれない。

年金問題について

長妻氏は、年金問題で厚生労働省を追いつめ、政治家としての点数を上げ、厚生労働大臣になった。
著者は、氏の激しい批判に違和感を禁じえなかったと言う。
消えた年金問題は、制度設計に誤りがあり、その責任は各政党にあると考えるからである。
日本では、年金は自己申告制であり、自己申告が無ければ、年金記録は断片的にならざるを得ない。
責任の一端は年金記録に無頓着で、場合によっては虚偽の申告すらおこなっていた企業や一部国民にもある。
社会保険庁だけを責め続けるのは、フェアとは言えないだろう。
制度設計に責任がある政党の責任を不問にして、年金記録の無駄な作業のために巨額の税金が費やされている。

自民党の枡添氏と同じように、政治家が役人を攻撃して国民の歓心を買おうとしている一面が見える。

0 件のコメント:

コメントを投稿