2011年5月25日水曜日

ハーブ・コーエン FBIアカデミーで教える心理交渉術

川勝久訳

2008 日本経済新聞出版社

交渉とは、何かをもらいたい相手から恩恵を施してもらえるように、知識を活用して努力することである。
社会は、巨大な交渉の場である。そこでは、優秀な人が報われるとはかぎらず、有能であるだけでなく、自分の欲しいものに向かって突き進んでいく「交渉能力」をかねそなえた人が勝利をおさめる。
人生を変えられるか否かは、自分の交渉能力しだいである。交渉能力とは、信じて疑わない相手をだましたり、おどしたりする能力のことではない。情報、時間、力を分析して相手の行動に影響を与える能力のことであり、相手側と自分側の双方の要求をかなえて、ことを思い通りに運ぶ能力のことである。

自分自身にかかわる交渉でも、あまり深刻に考えるのはよくない。自分のことを心配しすぎるので、プレッシャーと緊張感にあえぐことになる。他人のために交渉するときは、ずっと気が楽で、客観的になっている。たいして心配もしない。事態を遊びかゲームのようにとらえている。どんな状況にあっても、まるでゲームのように、幻覚の世界のように、努めて思うべきである。ベストを尽くすべきだが、思いつめてはならない。

多くの人にとって、この世は競争社会である。人生を絶え間のない勝負の連続だと思っている人もいる。このような競争型(ウィン・ルーズ)の交渉者は、この世を勝ち負けの連続とみなしている。
こういう関係がずっと続けば、交渉の結果は、後々の相互関係に後遺症を残すことになる。
これに対して、協調的なウィン・ウィン型の交渉では、相手を倒すのではなく、「問題を倒す」ことに焦点をあてる。関係者全員に満足のいく利益をもたらそうと努力することによって、交渉者がともに勝利する道をさがすのである。

交渉に入る時は、いつもソフトな物腰でなくてはならない。自分の立場を温和に述べ、頭をかき、自分がまちがっているかもしれないことを認め、嫌な相手にも、つねに如才なく敬意を払い、相手の身になって考えよう。
こうして、相手との信頼に根ざした関係を発展させながら、相手の真の要求を見出だし、それを満たす方法を考えると同時に、自分の欲しいものを手に入れるのである。

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