2011年5月18日水曜日

雨宮処凛 右翼と左翼はどうちがう?

2007 株式会社河出書房新社

1975年生まれ

右翼は、日本の伝統を守り、国を愛する体育系、左翼は、反権力で、自由と平等を唱えるインテリといったイメージがある。
天皇にたいする意見では、右翼は天皇を中心とした日本を愛し、左翼は、天皇制に反対する。
憲法については、右翼は憲法を改正して軍隊を持とうとし、左翼は憲法を護り反戦平和をスローガンとする。
左翼は、共産主義や社会主義をめざし、右翼は、徹底的に反共である。
右翼は、靖国神社に参拝に行き、左翼は、靖国神社を「戦争に行かせる装置」として反対する。
前回の戦争については、右翼は被害者的、左翼は加害者的な見方をしている。

左翼の運動は、明治時代に、日本が近代的な資本主義国家になり、資本家と労働者の区別ができたころに始まる。左翼には、社会主義者、共産主義者、無政府主義者がいるが、いずれも政府によって厳しく弾圧された。それに対して、右翼は、現状には反対だが、徹底的に反共という特徴がある。
戦後、左翼にとって華々しい時代がやってきたように見えた。労働組合がつくられ、共産党が解放され、中国では共産党による革命が成功した。しかし、共産党や社会党は、選挙では多数を獲得することはできなかった。
これにたいして、選挙ではなく、直接行動に訴えようとする新左翼が現れた。
新左翼は、60年の日米安保条約改定に反対し、激しい闘いを繰り広げた。
その後、70年安保を前に、ベトナム戦争反対、成田空港反対など、闘いを激化させていった。その頂点は、1968年の国際反戦デーで、この日、いたるところで学生と機動隊が乱闘を繰り返し、さながら市街戦のようであった。
全国の大学では、全共闘がバリケードを築いて無期限ストを行い、東大安田講堂を占拠して機動隊と攻防戦を繰り広げた。
最後に、過激な「赤軍」が登場し、よど号ハイジャック事件、あさま山荘事件を引き起こした。
世間から見放された左翼運動は、一気に下火になり、いろいろな左翼組織内部で「内ゲバ」が繰り返された。

1990年代にはいり、ソ連が崩壊して、社会主義圏の国が消え去ると、左翼は急激に勢いを無くしていった。
左翼の勢いが弱くなると、敵をなくした右翼の存在も、それほど目立たなくなり、国全体が、それまで右翼が主張していたような方向に動きつつある。

今の若者は、「高学歴ワーキングプア」と言われているように、一生懸命勉強して高い学歴を身につけても、社会では、かならずしも報われない。
従来の左翼や右翼は、そのような問題に対する答えを持っていない。
かって右翼に属していた著者は、右翼とか左翼とかと分類されたくないと考えている。右翼とか左翼とかいうレッテルがついた時点で、自分の考えかたがしばられてしまう気がするからである。

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