2012年5月22日火曜日

勝間和代 起きていることはすべて正しい


2008 ダイヤモンド社

三毒追放

「三毒」とは、仏教用語である。広辞苑によると貪欲、瞋恚(しんい)、愚痴の三つである。
著者による「三毒追放」とは、「妬まない、怒らない、愚痴らない」という三つの習慣で、著者は、これを紙に印刷してオフィスのブースに貼り毎日眺めていた。その結果、味方が増え、運を引き寄せることができるようになったそうである。
「三毒」のようなネガティブな感情は、相手に対する攻撃となるだけでなく、自分にも跳ね返ってきて、自分がポジティブになるのも妨げる。「三毒追放」の内容は、お寺の壁に貼ってあるときには、気持ちを穏やかにして、相手を許すという意味も含まれそうである。これに対し、著者の場合は、より合理的な「技術」としてとらえているようである。
嫉妬を感じる相手には、敬意を払うと同時に、しっかり分析し、参考になるところはどんどん取り入れて、一歩でも近づく努力をする。相手を妬むひまがあったら、その要因を要素に分解する。冷静に考えることができれば、妬む気持ちも薄れていく。
著者の場合、もっと実際的だと思われるのは、「怒らない」ことにあらわれている。自分の気持ちを抑えたり、相手を許したりするというより、いろいろやってみても、それでもだめなら、相手から物理的に遠ざかるのである。怒りの対象から遠ざかれば、怒りの感情も薄れていく。
著者は、わずか19歳で公認会計士の2次試験に合格し、21歳で1児の母となった。いくら優秀でも、男性中心の日本社会のなかで、若い女性がやっていくのはかなり大変だったであろう。著者は、その後、監査法人を辞めて、外資系企業に転職し、コンサルティング・ファームを経て、いまは、経済評論家として多数のベストセラー本を出している。ここまでやってくるのには、多くの「怒り」の対象から遠ざかることが必要だったのではないかと思った。著者の「三毒追放」とは、自身の悪戦苦闘の経験から得られたものなのであろう。

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