2011年6月10日金曜日

雨宮処凛×佐高信 貧困と愛国

2008 毎日新聞社

雨宮処凛 1975年生まれ

佐高信  1945年生まれ

「右翼」や「愛国」に心を寄せる若者が増えているという。
フリーターなどと呼ばれている「貧困」な若者がなぜ「右翼」や「愛国」なのか。
彼らは、自分たちが今のような立場に置かれているのは、「戦後民主主義」のためだと思っているらしい。
雨宮は、「子供たちを戦場に送りだしてはならない」と訴えている「反戦平和」の教師が、学校では、ひどい「いじめ」がされているのに、見て見ぬふりをしていたと言う。
彼らが、「戦後民主主義」に反発するのは、学校や教師にたいする失望や反感が原因のひとつになっている。
これに対して、佐高は、「彼らは標的をまちがっている。格差社会を作ったのは、小泉、竹中だ」と反論するが、信じ込んできた「学校民主主義」のひ弱さを突きつけられたのには、ショックを隠すことができない。
小泉、竹中の「新自由主義」や「市場原理主義」に基づく「構造改革」は、競争に勝った者と負けた者との「格差」を拡大し、「貧困」な若者を多数生みだしたと論じる人もいる。
佐高は、この点を指摘して、「小泉、竹中が悪い」と言うのである。
いっぽう、「戦後民主主義」は、個人の自由を強調し、愛国心や道徳は軽視してきたため、人と人との絆は希薄になり、バラバラで孤独な個人を作ってきたという一面もある。
人と人との助け合いや思いやりのない社会は、「格差社会」の『負け組」には、よりいっそうきびしいものになる。
学校では教えられることのなかった「愛国」や右翼的な考え方は、「貧困」な若者にとって、新鮮な驚きらしい。
また、グローバリゼーションの最底辺で働いている若者の同僚は、中国人や韓国人である。最底辺で外国人といっしょに働いていることが、彼らを、よりいっそう「愛国」のほうに向かわせている。
なかには、世の中をリセットするには「戦争」まで望む者がいるという。「戦争」があれば、再チャレンジできるかもしれないが、そうでもなければチャンスはないという。

行き場のない不満が社会に溜まってきているのかもしれない。

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