2008 プレジデント社
1958年生まれ
「ジョン・メイナード・ケインズ。1883年、イギリス生まれ。1936年に発表した『一般理論』が一大センセーションを巻き起こし、現代経済学のスーパースターになるも、理論上の不備が発見されて失墜。『ケインズは死んだ』とまで言われたが、その圧倒的なビジョンには、いまなお経済学者を挑発してやまない悪魔的魅力が備わっている・・・・。」(背表紙より)
いまでは、景気が悪くなると公共事業をやるのが「ケインズ政策」というイメージが強い。
それもケインズの一面ではあるが、ケインズという経済学者は、そのほかにもいろいろな面を持った学者である。
ケインズの金融市場観の特徴は、独特の「不確実性」認識にある。
人は、未来のできことに関して、推測をしながら経済行動をするが、その際に行う推測は、客観的な物理的確率ではなく、主観的な「内的論理での」確率である。
主観的な推測であるから、金融市場に不和雷同の熱狂をもたらしたり、パニックに陥れたりしたとしても何も不思議もない。
経済活動は同一の環境で繰り返し行われるなどということはない。
したがって、通常の確率や統計は出る幕がない。
このような真の「不確実性」との遭遇がサブプライムローンによる混乱の原因である。
「貨幣とは何か」という分析を行ったのもケインズである。
貨幣の機能にはいくつもあるが、その中でケインズが注目したのは「流動性」という性質である。
貨幣の流動性とは、「いつでも思い立ったときに額面と同じ価格のどんな商品とでも交換できる」という性質のことである。
この貨幣のもつ性質が経済のあり方を決める本質になるとケインズは考えた。
それまでの経済学者は、貨幣というのは単に交換を仲立ちをするにすぎないと考えていた。
人々が貨幣を欲し、それに執着するのは貨幣の流動性のためであるが、流動性というのは、けっきょくできるかぎり決断を先延ばしして優柔不断でいる権利を手に入れることである。
人は貨幣によって優柔不断でいることができる状態を手に入れたが、資本主義を大不況へと導くことにもなった。
このようなことを最新の数学や確率を使って研究している理論経済学者のグループがおり、著者もそのうちの一人である。
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