2013年4月24日水曜日
永濱利廣 日本経済のほんとうの見方、考え方
2011 株式会社PHP研究所
いわゆるアベノミクスは、日本経済のデフレからの脱却をめざし、日銀の大胆な金融緩和によって、物価を年率2%上昇させることを目標にしている。物価が2%上昇するのにインフレとは言わず、「物価安定目標」と言っている。
安倍総理の発言以来、円は安くなり、株価は上昇した。さらに、黒田日銀新総裁による「異次元の金融緩和」により、さらにそれが加速している。
そのため、円や株の動きは、思惑だけで動いたのだから、バブルだと言う人もいる。
しかし、もともと高すぎた円が安くなり、安すぎた株価が高くなったのだったとしたら、バブルどころか正常なあるべき状態に戻りつつあると考えることもできる。
本書によれば、「購買力平価」で見ると、円の実力は1ドル110円程度であるという。
円が1ドル80円になったのは、貿易や金融で使われている外国為替相場での話である。
100円で何が買えるのかという基準でみれば、1ドル110円くらいだと言うのである。
購買力平価でみると、日本の一人当たりGDPは、世界で20番目以下であるというが、このほうが実感に近い。
また、消費者物価が上がらないので、デフレだというのは、たしかにそうかもしれない。
しかし、「消費者物価指数」というのは、さまざまな物価のある種の平均にすぎない。
ぜいたく品と言われるパソコン、テレビ、デジカメの価格は、大幅に下がっている。
そのいっぽう、食品や燃料費のような生活必需品の価格は、むしろ上がり気味である。
新興国の旺盛な需要により、穀物価格や原油価格は上がっている。
それに目をつけた投機資金が穀物市場や原油市場に流れこんでいる。
食品や燃料は、輸入物価の影響を受けやすいので、それらの価格は、じわじわと上昇していくのである。
さらに、今後、消費税をはじめとした増税が本格化してくる。
所得は増えないのに、物価だけ上がることが懸念される。
2013年4月18日木曜日
梅田望夫 シリコンバレーは私をどう変えたか
2001 株式会社新潮社
シリコンバレーの野心あふれる若者たちが考えることは、あんがい表面的である。
20代後半から始めて、30代から40代まで働き、50代前半でアーリーリタイアメントを目指すのだという。
給料をもらうだけでは困難であるが、ベンチャー企業を立ち上げて企業価値を高めてから企業を売り払うとか、ストックオプションを行使して巨額の金を得るのだという。
資産を活用すれば、80歳くらいで死ぬまで働かなくともいいことになる。
人生最大の目的は、金を得ることで、あとは楽して暮らそうということなのだろうか。
それとも、若いうちは、60歳の自分は考えることができず、目先の競争にしか気が回らないのだろうか。
60歳にもならずに亡くなったスティーヴ・ジョブズが、若者たちに「おろかであれ、ハングリーであれ」と呼びかけていた。いったいどういう意味なのか。若者にはわかる言葉でも、年寄にはわかりにくい。
いっぽう、日本では、政府が企業に65歳まで定年を延長するよう要請している。
終身雇用なら、なまじ有能であるより、協調性のあることを示すのがなによりである。
同じ会社に定年まで居るのなら、誰にでも気をくばって、悪い噂が立たないようにするのが第一で、やる気をみせて自己主張をしたり、正義感を発揮して上司と争っては、出世もできず、会社にいる間は悪い評判がつきまとう。
個人中心のアメリカ流のやり方は、イノベーションは生まれやすいが、勝ち組と負け組との格差は非常に大きくなる。
いっぽう、組織本位の日本流のやり方では、新しいことはなかなかできにくい。
アメリカ流に事業に成功して50歳でリタイアしても、それこそ毎日が日曜日では退屈だろうし、かと言って、日本流に65歳まで同じ会社に勤めるのでは、大部分の社員に不満とストレスが溜まることになる。
どちらにしても、今までは65歳以降のことは、あまり考えに入れられていなかった。
しかし、これからは65歳以上の高齢者がさらに増えていくという。
「団塊の世代」が、良くも悪くも再び注目を浴びることになる。
2013年4月10日水曜日
北門達男・稲浦綾 情報分析と課題解決の技法
2012 株式会社大学教育出版
80対20の法則
80対20の法則は、100年ほど前にイタリアの経済学者パレートが発見した法則が始めである。
パレートは、所得と資産の分布を研究した結果、人口のわずか20パーセントの人達に、総資産額の80パーセントが集中していることを発見した。この法則は、所得や資産の不平等度を表すもので、経済学ではパレートの法則と呼ばれている。
その後、似たような法則が、つぎつぎと発見された。
顧客の20パーセントが売り上げの80パーセントに貢献している。
商品の20パーセントが売り上げの80パーセントに貢献している。
社員の20パーセントが売り上げの80パーセントに貢献している。
ある科目のうち20パーセントの重要事項が80パーセントの割合で試験に出る。
保有している情報の20パーセントを80パーセントの割合で利用している。
単語の使用頻度が20パーセントの単語が80パーセントの割合で使用される。
したがって、たとえば、外国語の学習をするときには、よく出る単語1000語程度をまず覚えることが重要である。
品質管理では、欠陥の上位3位程度の原因を突き止めて徹底的に対策をすることによって、大幅に品質が向上する。
こういう「法則」は、いろいろなところで適用できる。
もし、新種の20対80の法則を発見できれば、学問上で名を残すこともできそうである。
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